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遺伝医療ってなに?・5
“見たいもの”と“見えるもの”のギャップ
著者: 櫻井晃洋1
所属機関: 1札幌医科大学医学部遺伝医学
ページ範囲:P.484 - P.486
文献購入ページに移動Sanger法によるこれまでの遺伝子解析が,候補遺伝子を1つずつ調べていくものであるのに対し,NGSでは全ての遺伝子(エクソームあるいはゲノム)を一度に網羅的に解析することが可能である.Sanger法が一本釣り(図1)だとすればNGSは曳網漁(図2)のようなものである.したがって解析すべき遺伝子を特定できないような症例の遺伝子診断に圧倒的な強みを発揮する.例えば,既知の症候群では説明できないような多発奇形をもつ小児,あるいは原因遺伝子が多数知られていて個々の遺伝子の解析では非常に手間がかかる先天性難聴や神経疾患の遺伝子診断などである.2013年のNew England Journal of Medicineに報告された研究1)では,遺伝性疾患が疑われるが診断が確定していない患者(大多数は神経疾患を有する小児)を対象にNGSによる網羅的な遺伝子解析(全エクソーム解析)を行い,約25%の症例で原因遺伝子を同定している.Sanger法による候補遺伝子アプローチではほとんどが原因遺伝子を同定できないか,できたとしても非常な労力を要したであろうことを考えると,大変な進歩である.そうであれば,いろいろ原因遺伝子をあれこれ予測して解析するよりも,早くて安上がりな網羅的解析がより選択されていくのは必然といえる.
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