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文献詳細

雑誌文献

臨床検査59巻7号

2015年07月発行

文献概要

今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

末梢血液像の観察ポイント

著者: 阿南建一1

所属機関: 1福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科学

ページ範囲:P.664 - P.671

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Point

●末梢血液像の観察のポイントは,造血三血球の正常分化・成熟過程を習得したうえで,末梢血の正常構築を担う細胞を認識することから始まる.血液標本の作製には人為的手法と機械法があり,双方ともに薄層塗抹法(ウェッジ法またはそれに準ずるもの)で作製され,細胞の判読および同定には“きれいな塗抹と華麗な染色”が求められる.実際の光学顕微鏡観察では低倍率,中倍率,高倍率を巧みに操り,正常細胞はもとより異常細胞を見逃さないようにする.

●形態異常とは,血球の分化・成熟障害や諸因子による局所の正常構築の破綻に伴って出現する異常細胞のことであり,そこには異形成(dysplasia)と異型性(atypia)所見を呈する細胞の出現が予測される.異常細胞とは,見逃してはならない細胞,すなわちパニック細胞であり,その緊急度は高い.それらについては,形態異常に加えて機能異常も模索しながら,関連する血液疾患を考慮して臨床へ報告すべきである.

●アーティファクト(人工産物)は,血球計測値や細胞同定に影響を与えることから,その原因を認識したうえで回避法に努めることが重要である.多くは採血行為や抗凝固剤によるものであるが,患者自体に問題がある場合もあり,形態診断においてはピットフォール(落とし穴)にもなりうるので,十分に注意する.

参考文献

1)阿南建一,亀岡孝則,須田正洋:血液形態検査の実際.エビデンス血液形態学,近代出版,pp29-31,2014
2)柴田進,阿南建一,山田治,他:カラーアトラス血球Q&A,金芳堂,pp35-36,1994
3)Diggs LW, Sturm D, Bell A:The morphology of human blood cells, Saunders, Philadelphia, London,1956
4)重田英夫:血球の形態学的検索法 普通染色.臨病理 48:1-23,1982
5)阿南建一,亀岡孝則,須田正洋:血液形態検査の実際.エビデンス血液形態学,近代出版,pp16-18,2014
6)阿南建一,三浦偉久男:形態異常の定義は?.白血病診療Q&A(松村到編),中外医学社,pp23-24,2015
7)手登根稔,山野健太郎,山田勝也,他:血液検査分野におけるクロロキン製剤の有用性.生物試料分析 29:72-73,2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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