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文献詳細

雑誌文献

臨床検査60巻5号

2016年05月発行

文献概要

検査レポート作成指南・9

筋電図検査編

著者: 山内孝治1

所属機関: 1医療法人大真会大隈病院臨床検査科

ページ範囲:P.554 - P.571

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 誘発筋電図検査の1つである神経伝導検査(nerve conduction studies:NCS)は,原則として末梢神経を電気刺激することによって,筋あるいは神経線維から誘発される活動電位を評価する電気生理学的検査である.

 活動電位の評価は,導出された電位波形の潜時(latency),振幅(amplitude),持続時間(duration)を基本とした計測値とその形状が中心となる.ただし,病的要因以外にもいくつかの要因(皮膚温,導出電極の位置,導出電極間距離,刺激強度,刺激の波及,接触抵抗,フィルタ設定など)によっても電位波形はさまざまに変化する.そのなかには検査担当者(検者)のみが知り得る情報もあることから,本来,診療に携わった医師が自ら検査することが最もよいことになる.しかし,全ての医師が神経伝導検査に関する知識や技術面において精通しているわけではなく,さらに日々の業務を考慮すると時間的にも難しいのが現実である.そのため検者には,高度な検査技術とその評価に必要な解剖学,電気生理学,臨床工学,病理学的な知識に基づいて,電気生理学的な妥当性あるいは矛盾を速やかに判断する能力が要求される.そして,障害の検出,分布状態の評価,病態の鑑別,予後の推定に必要な客観的情報,臨床症状からは推測不能であった所見,検者のみが知り得た情報などが記載された診療に活用できる信頼性の高い報告書(レポート)を作成することが必要となる.

 以上から,神経伝導検査におけるレポートは,検者が依頼医師の検査目的に応じて,電気生理学的理論と高度な検査技術に裏付けされた検査結果から導き出される,正確かつ診療に有用な情報を伝えることを目的として作成することがポイントとなる.

参考文献

1)山内孝治:末梢神経伝導検査.第38回日本臨床神経生理学会技術講習会テキスト,pp187-217,2001
2)Kraft GH, Halvorson GA:Median nerve residual latency: normal value and use in diagnosis of carpal tunnel syndrome. Arch Phys Med Rehabil 64:221-226,1983
3)Shahani BT, Young RR, Potts F, et al:Terminal latency index (TLI) and lat response studies in motor neuron disease, peripheral neuropathies, and entrapment syndrome (abstract). Acta Neurol Scand (Suppl):118,1979
4)Preston DC, Logigian EL:Lumbrical and interossei recording in carpal tunnel syndrome. Muscle Nerve 15:1253-1257,1992
5)廣谷速人:しびれと痛み 末梢神経絞扼障害,金原出版,1997
6)木村淳,幸原伸夫:神経伝導検査と筋電図を学ぶ人のために 第2版,医学書院,2010
7)Campbell WW, Sahni SK, Pridgeon RM, et al:Intraoperative electroneurography: management of ulnar neuropathy at the elbow. Muscle Nerve 11:75-81,1988
8)足立晶子,足立芳樹,中島健二:ニューロパチー分類.Clin Neurosci 19:18-20,2001
9)村上龍文,内野誠:Charcot-Marie-Tooth病/hereditary neuropathy with liability to pressure palsies.臨検 41:1297-1302,1997
10)Jun Kimura:神経・筋疾患の電気診断学 原理と実際(栢森良二訳),西村書店,pp421-422,1989

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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