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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査60巻7号

2016年07月発行

雑誌目次

今月の特集1 The SLE

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山田 俊幸

pp.697

 かつては難病のイメージが強かった全身性エリテマトーデス(SLE)ですが,近年,そのイメージは払拭されつつあります.今回,あらためて,この病気をオーバービューしてみました.臨床像の変遷,成因(特に遺伝素因)の考え方,重要な検査とその方法について知識をアップデートしてください.

 本症は臨床像も多様ですが,検査成績も実に多様なため,検査医学を学習するうえで教育的な課題を与えてくれます.例えば,なぜ補体価が低下するのかを追究していくと,補体の活性化機構というものがわかります.本特集は,そのような視点でも読み込んでいただければ幸いです.

SLE診療の変遷

北田 彩子 , 岡田 正人

pp.698-702

Point

●全身性エリテマトーデス(SLE)は免疫複合体の沈着によって全身のあらゆる臓器に多彩な症状を呈しうる.

●あくまで分類基準は臨床研究のためのものであり,診断は臨床的に行う.

●個々の標的臓器を定めて治療を行う.

●2015年に,わが国でもヒドロキシクロロキンが承認された.

SLEの成因論

住友 秀次

pp.704-708

Point

●全身性エリテマトーデス(SLE)の病因には遺伝的要因と環境的要因の双方がかかわっている.

●遺伝的要因として,単独で強い影響を与える遺伝子は乏しい.

●免疫学的病因には自然免疫〔Toll様受容体(TLR)・インターフェロン〕と適応免疫の双方の異常があり,治療戦略の基盤となっている.

SLEでみられる自己抗体の意義

中島 俊樹 , 大村 浩一郎

pp.710-715

Point

●全身性エリテマトーデス(SLE)では多彩な自己抗体が出現する.その測定は診断や臨床経過の推測に有用である.

●自己抗体ごとに検査特性が異なり,例えば抗核抗体はスクリーニングに,抗DNA抗体や抗Sm抗体は確定診断に向いている.それぞれの特性に応じた使い分けが必要である.

●SLEの診断は臨床症状があることが前提であるので,その症状に応じて必要な検査をオーダーするように心掛ける必要がある.

SLEの診断に関連する臨床検査

中西 研輔 , 金城 光代

pp.716-721

Point

●全身性エリテマトーデス(SLE)患者において,血球減少や抗リン脂質抗体症候群(APS)の合併などの血液学的異常の頻度は高い.

●溶血性貧血と血小板減少が合併した場合には,末梢血塗抹検査で破砕赤血球の有無を確認する.

●補体はSLEの診断や治療効果判定だけでなく,腎炎の鑑別にも有用である.

●膠原病治療中の不明熱では,悪性腫瘍の合併やマクロファージ活性症候群(MAS)を含む後天性の血球貪食リンパ組織球増多症(HLH)を鑑別に挙げる.

SLE関連検査技術の現状

林 伸英

pp.722-728

Point

●わが国にも,間接蛍光抗体法(IF法)による抗核抗体検査の自動システムが導入されている.

●サスペンションビーズアレイテクノロジーは1つの反応系で同時多項目測定が可能であり,疾患標識自己抗体検査をはじめ,さまざまな分析に応用されている.

●放射免疫測定法(RIA法)による抗DNA抗体検査は高親和性の抗DNA抗体を捉えることができ,全身性エリテマトーデス(SLE)の診断と経過観察に重要な検査である.

今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

フリーアクセス

岩田 敏

pp.729

 百日咳ワクチンは,四種混合(DPT-IPV)ワクチンまたは三種混合(DPT)ワクチンとして,ジフテリアトキソイド,破傷風トキソイド,不活化ポリオワクチンとの混合ワクチンの形で,乳幼児を対象にして定期接種が行われてきました.ワクチンの普及によって百日咳の発症例・死亡例は激減しましたが,近年,百日咳に対する感染防御免疫の低下した年長児や成人における発症や,それらの患者から感染したワクチン接種前の新生児・早期乳児期における重症例の発症が問題となっています.

 一方,培養法による百日咳菌の検出には検体採取と分離培養に習熟を要することや,培養法や遺伝子検査による病原体検出は発症後時間が経過すると感度が低下することなどから,百日咳の確定診断は,特に思春期以降の症例において難しくなっています.本特集では,百日咳の診断・治療・予防に関する最新情報について,今この領域で問題となっている点も含めて,わかりやすく解説していただきました.

百日咳の疫学—国内外の状況

神谷 元

pp.730-735

Point

●百日咳は,世界的にみてもワクチンでは十分にコントロールできていない.

●海外ではサーベイランスが充実しており,重症化しやすい乳児を守るための対策を実施している.

●国内の百日咳サーベイランスには多くの制約があり,正確な疾病負荷を把握しきれていない.

●わが国の百日咳対策として,追加接種や,成人へ接種可能なワクチンの認可を検討する必要性がある.

百日咳菌の細菌学的特徴と病原性因子

桑江 朝臣 , 阿部 章夫

pp.736-741

Point

●百日咳菌は多くの種類の病原因子(毒素や付着因子)を産生する.

●ほとんどの病原因子はBvgASと呼ばれる制御因子によって制御される.

●咳症状を起こすために中心的な役割を果たしている病原因子は未同定である.

—百日咳の検査診断①—培養・同定法

岡田 潤平

pp.742-747

Point

●Bordetella pertussisの検出のための検体採取には,鼻咽頭洗浄液や鼻咽頭吸引液の使用を推奨する.

●鼻咽頭分泌物を綿棒でサンプリングする場合,不飽和脂肪酸の含有量が少ないポリウレタン製の綿棒,チャコールを含有した保存用培地,あるいはESwabTM(Copan Diagnostics社)を使用する.

●分離培地はBordet-Gengou培地あるいはボルデテラCFDN寒天培地を使用する.

●分離培養の適応は百日咳様の症状が出現してから2週間以内とし,それを過ぎた場合はPCRや血清学的検査を適応する.

—百日咳の検査診断②—遺伝子学的診断法

下條 誉幸

pp.748-755

Point

●国内初となる百日咳菌核酸キットとして,LAMP法による体外診断用医薬品が発売された.

●遺伝子学的検査は最も高感度な百日咳の病原診断の方法であり,百日咳の早期診断と感染拡大防止への貢献が期待できる.

●LAMP法による百日咳菌検出試薬はすでに複数のガイドラインに記載されている.今後,臨床現場で広く利用されるために保険適用が望まれる.

—百日咳の検査診断③—血清学的診断法

蒲地 一成

pp.756-761

Point

●百日咳の血清診断は抗百日咳毒素免疫グロブリンG(PT IgG)抗体の測定によって行われる.この血清診断法は世界の標準検査法となっている.

●血清診断の基準値は各国で異なり,わが国では患者のワクチン歴を考慮した診断基準がガイドラインとして示されている.

●抗PT IgG抗体の誘導には時間がかかるため,血清診断は発症2週間後からの適用が推奨されている.

百日咳の臨床診断

岡田 賢司

pp.762-766

Point

●百日咳の典型的な症状をまとめた.

●軽症な百日咳はワクチン接種児や成人に認められる.

●乳児の百日咳は重症化のリスクが高いが,特徴的な咳は少ない.早期の診断・治療が必要である.

●百日咳の新しい診断基準を提案した.

百日咳の治療

新庄 正宜

pp.768-771

Point

●マクロライド系薬剤は百日咳患者からの排菌期間を短縮する.

●マクロライド系薬耐性百日咳菌はまれであるが,世界の地域によってはまん延している.

●百日咳に対して確実に有効な支持療法・対症療法はない.

百日咳ワクチンによる予防—これまでとこれから

中山 哲夫

pp.772-778

Point

●百日咳罹患者は7〜12歳の学童期から増えてくる.

●7歳時で60%が百日咳毒素(PT)抗体陰性であるが,その後,6年ごとに陽性例が増加してくる.

●百日咳成分を含んだワクチンの追加接種時期の検討が必要である.

●ワクチンによる免疫能の持続とともに,有効な抗原成分の検討が必要である.

心臓物語・4

なぜ心臓は休むことなく動き続けるか?

島田 達生

pp.696

 どっくんどっくん,どくどく.心臓の声が聞こえる.ふと右手で左橈骨動脈を触れてみた(脈診).脈の乱れがあった.途中に弱い脈が入り,はっきりとした脈拍数が捉えきれない.不整脈を自ら体験した.心臓は一般的に1日に平均100,000回動いている.71年間,雨の日も風の日も休むことなく,そのように動いていた私の心臓.考えてみるとすごい.動きのリズムがちょっとくらいおかしくても不思議ではない.専門医の門をくぐり,24時間Holter心電図検査を受けた.寝ているときの脈は正常だが,起きているときは常に二段脈の不整脈が出ていた.診断名は上室性期外収縮であった.加齢によるものである.

 さて,なぜ心臓は休むことなく動き続けることができるのであろうか? 不思議だ.同じ横紋筋である骨格筋と心筋の形態の差を電子顕微鏡で迫ってみた.筋原線維を構成する明帯(アクチンフィラメントのみからなる)と暗帯(アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが交互に配列している)の微細構造は,両者とも全く同じであり([1],[2]),Z帯の位置に横細管がある([2]).さらに,カルシウムを貯蔵している筋小胞体が網状をなして,筋原線維を包囲していることは共通の特徴である([3],[4]).しかしながら,筋原線維と筋原線維の間の筋形質に両者の大きな差異がみられる.[1]の骨格筋線維をみると,Z帯を挟んで小型で類円形のミトコンドリアが列をなしてリボン状に配列している.一方,[2]の心筋線維では,筋原線維間に配列するミトコンドリアはかなり大型で,筋節(Z帯からZ帯まで)の長さに匹敵している.拡大像で,ミトコンドリアのクリスタは極めて発達している([3],[4]).凍結割断した心筋組織を走査電子顕微鏡でみると,筋小胞体やミトコンドリアが立体的にみえる([4]).

検査レポート作成指南・11

細菌検査編

柳沢 英二

pp.780-785

 臨床微生物検査では,感染症の起因微生物の検出,薬剤感受性試験,菌交代現象の確認および耐性菌の検出,病院内感染の予防など,臨床への情報発信が重要視されている.臨床医はそれをもとに総合的に診断をするが,報告書の記載の仕方によっては誤った判断をする場合がある.例えば,塗抹検査ではグラム陽性球菌,桿菌,グラム陰性球菌,桿菌だけを記載するのではなく,白血球を観察し,多核白血球なのかリンパ球か抗酸球かなどの判別を,また,抗菌薬の作用で菌が膨化しているか,貪食像はみられるかなどを報告書に記載することにより臨床医が総合的な診断ができるようにすることが重要である.

 微生物検査を専門として行っている臨床検査技師は常に,検体からみられる情報を正確に臨床医へ伝達することを念頭に置いて報告書を作成することが重要である.つまり,信頼が高く付加価値のある検査成績を報告できるよう努力することである.本稿では細菌検査報告書の作成に当たって,臨床に役立つコメントを中心に指南する.

検査説明Q&A・18

—レセプトではじかれる検査項目の組み合わせや依頼回数を教えてください[4]—細菌検査編

松本 竹久

pp.787-789

■はじめに

 通常,患者が病院や診療所などの医療機関を受診した場合は医療費が発生します.その医療費の一部は患者が窓口で支払いますが,残りの医療費については医療機関が,健康保険事業の運営主体である保険者(市町村や健康保険組合など)に請求を行います.その医療報酬の明細書が診療報酬明細書(レセプト)になります.医療機関はレセプトを作成し,医療費の保険負担分の支払い請求を国民健康保険団体連合会や社会保険診療報酬支払基金へ提出します.その後,レセプトはそれぞれの機関での審査を経由して,最終的に保険者に送られます.

 レセプトには診療行為ごとに詳細な条件が設定されており,適さないレセプトについては審査ではじかれてしまい,保険者へ医療費を請求できなくなります.臨床検査においてもレセプト算定の条件が詳細に設定されています1)

 本稿では,そのなかでも,細菌検査の塗抹・培養同定・核酸同定検査の主だった項目にかかわるレセプトで,はじかれる検査項目の組み合わせや検査依頼回数を紹介します.

 各検査において,レセプトではじかれる検査依頼回数は,多くの場合は設定されていません.検査依頼に妥当な理由があれば多くの場合は算定されますが,妥当な理由がないにもかかわらず,何度も検査を行えば当然レセプトではじかれています.主な細菌検査依頼項目で併せて実施しても主たるもののみの算定となる検査を表1に,レセプト条件での注意点を表2に示します.

資料

高濃度サリチル酸ナトリウムを使用したウレアーゼ・インドフェノール法による尿素窒素の定量:学生実習への使用

鴨下 信彦 , 為本 浩至 , 富永 眞一

pp.790-795

 尿素をウレアーゼでアンモニアに分解した後に,青色のインドフェノール色素に変換するウレアーゼ・インドフェノール法は,尿素窒素定量法として長い歴史をもち,初学者の印象にも残る呈色反応である.臨床検査室の測定が酵素法に変わり,インドフェノール法を扱う製品と書物が消えていくなか,教育に携わる筆者らは,学生自身が実習で尿素の定量を行う目的で,原法のフェノールを高濃度サリチル酸ナトリウムに変えた測定系を再構築した.

寄生虫屋が語るよもやま話・7

先生,実習が始まります!—糞線虫症

太田 伸生

pp.796-797

 糞線虫という寄生虫がある.学名であるから仕方がないが,あまり奇麗な名前ではない.動植物の学名の命名者の多くは理科系の人間だからか,デリカシーに乏しいのかもしれない.2015年のノーベル医学・生理学賞の受賞対象にもなったマラリアの特効薬であるアーテメーターであるが,その材料になる植物の学名もクソニンジンと,ご本人(?)には大変気の毒である.糞線虫というが,名前と違って美しい外観の虫で,私たちの業界にも根強いファンがいるし,研究室の妙齢の美女先生の研究テーマでもある.彼女が二言目には“フンセンチュウが,……”と語り始めるので,上司としては縁談に差し支えることを少しだけ懸念している.人間の体内にいる糞線虫は全部雌である.その生殖のからくりには不明の点も多く,くだんの美女先生の研究テーマである.ご本人は日がな雌虫ばかり相手にしているとますます縁遠いかとも思うが,それをいえばセクハラと訴えられるのもこの時勢で,用心には余念がない.

 小さくて美しい糞線虫であるが,臨床医学的にはやや面倒なことを起こす.寄生線虫の仲間は原則としてヒト体内では増殖しない.糞線虫は人間の小腸で幼虫を産み,通常はそのまま糞とともに体外に出ていく(図).しかし,人間の側が少しだけ体調がすぐれない場合はそのまま体内にとどまって発育し,成虫になる.自家感染といわれる現象である.その結果,一度感染するとエンドレスに人間の小腸の中に居座り,何十年にわたって家主と交友関係が持続することが多い.免疫状態が低下した人では自家感染の程度が特に激しくなり,体中に糞線虫が充満する播種性糞線虫症も起こってくる.喀痰にも幼虫がたくさん排出されるなど,場合によっては致命的である.

元外科医のつぶやき・19

病理結果を踏まえて

中川 国利

pp.798

 前立腺癌で手術を受けてから4カ月後の指定日に,切除標本の病理結果を聞きに外来を受診した.病理結果は,生命保険の診断書に記載されていたように,pT2c, pN0, cM0のstageⅡであった.泌尿器科の教授は,“術前は手術で取り切れるか心配でしたが,病理学的には問題ありませんでした.放射線療法ではなく,手術を行って正解でした.私も責任が果たせてホッとしました”と語った.一方で,“切除断端への浸潤はなく,リンパ節転移も認めませんが,病理学的にpT2cの中間リスクですので,再発する可能性はあります”と,執刀医の立場として付け加えることを忘れなかった.この姿勢は私自身も外科医時代にとってきたことであり,よしみを感じた.

 “リンパ節はサンプリングですか”との問いに,教授は“いいえ,左右の内腸骨・外腸骨・閉鎖腔リンパ節の全てを郭清しました.実は開腹手術より腹腔鏡下手術のほうが的確に郭清することができます”と,自信の一端をのぞかせた.成書には,ロボット補助下手術や腹腔鏡下手術による拡大リンパ節郭清には限界があると記載されている.しかしながら,達人にとっては拡大視効果のため開腹手術より容易であり,元外科医の私自身も腹腔鏡下手術のほうが的確に行うことができた.

書評 —記述式内膜細胞診報告様式に基づく—子宮内膜細胞診アトラス フリーアクセス

長村 義之

pp.799

即時に応用可能なアトラス

 子宮内膜細胞診を臨床検査として日常的に実施しているのは,国際的にもわが国だけであり,日本での細胞診従事者は,この分野で世界のリーダーとして位置付けられてきた.

 本書は,日本臨床細胞学会で作成した全身26領域の「細胞診」の中で,婦人科・泌尿器の「記述式内膜細胞診報告様式」にのっとって,これまでに蓄積された知見を網羅して作成され,「背景」「定義」「診断基準」を明記したアトラスとなっている.「診断基準」はわれわれが慣れ親しんでいる子宮頸部細胞診報告様式(ベセスダシステム)の判定基準と同様に活用できるよう工夫されており,使いやすい.また,直接塗抹法のみならず液状化検体細胞診(LBC)にも言及されており,いずれの施設においても即時に応用が可能である.内膜細胞診におけるLBCの利点も強調されている.

書評 内科診断学 第3版 フリーアクセス

長谷川 仁志

pp.800

「国際認証評価時代における医学教育の質保証」のために,全ての医学生・医師にとって必携の一冊!

 日本で「医学教育の国際認証評価時代」の動きが本格的に始まってきている2016年2月に,待望の『内科診断学 第3版』が発刊された.8年ぶりに大幅改訂された中身を見て,まさにこのテキストは医学科1年生からの臨床実習前教育から診療参加型臨床実習時,さらには生涯教育まで,すなわち初学者から指導医まで,症候・病態ベースで統合すべき日本の医学教育改革を実現化するバイブルと言えるテキストであり,内科系のみではなく,全国の全ての医学生,医学部教員,医育にかかわる機関の各科指導医の皆さんにお勧めしたい一冊であることを実感した.

 その理由としては,1)始めの「診断の考え方」(第Ⅰ章)と「診察の進め方」(第Ⅱ章)で医療面接における情報収集スキルの重要性と臨床推論のエッセンス(検査前確率,尤度比など)と信頼を確立するために必要なコミュニケーションンスキルなどについて,カラー図表が駆使されて初学者でもわかりやすくまとめられていること,2)続いての「症候・病態編」(第Ⅲ章)で,発熱,全身倦怠感,めまい,頭痛,胸痛から精神領域の救急まで,何科の医師としても実践対応が可能になるよう修得すべき約100の必須症候・病態について,患者の訴え方,医療面接,身体診察,確定診断のポイントなど臨床各分野横断的な統合教育を展開するために適した内容で,幅広く網羅されていること,3)購入者は,本文を収載した付録電子版も利用でき,いつでもどこでもネットを介して読むこともできるようになったことが挙げられる.特に,1)2)については,医師の資質・人間力を養う「プロフェッショナリズム教育効果」も高く,この観点からも有用であることを強調しておきたい.

書評 医療レジリエンス—医学アカデミアの社会的責任 フリーアクセス

安藤 潔

pp.801

現在われわれが直面している問題への絶好のオリエンテーション

 われわれが医療現場で経験している過去10年のさまざまな変化が,どのような原因によるものなのか? それは日本における特殊な変化なのか,世界共通のものなのか? これらの変化にわれわれは今後どのように対応してゆけばよいのか? そのために医学アカデミアが果たす役割は何か?

 このような疑問を持つ読者にとって,本書は絶好のオリエンテーションを与えてくれるであろう.「超高齢社会」「健康格差」「福島原発事故」「グローバルヘルス」「ビッグデータ」「医療技術評価」「コンパクトシティ」「ソーシャルキャピタル」「総合診療専門医」などのテーマが本書で扱われている.

あとがき フリーアクセス

河合 昭人

pp.804

 本号が発刊されるころは,日本は梅雨入りしているでしょうか? 日本には四季が存在し,その季節ごとに楽しみであったり憂鬱であったりと,人々を一喜一憂させています.むろん梅雨といえば,後者のほうが多いことが簡単に想像できます.しかし,“恵みの雨”という言葉もあり,雨が降らないと困ってしまう人がいるのも事実です.

 私の友人たちに私の印象を尋ねると,多くの友人は“雨男”と答えるでしょう.最近の趣味であるキャンプでは,雨の降らなかった日がないといわれ,息子の運動会は順延に次ぐ順延……大きな行事ではほとんどが雨でした.しかし,そんな私も晴天のときがありました.私の結婚式と息子の入学式です.このときばかりはお天道さまも,私の普段の品行方正な行い?から太陽を目覚めさせてくれたに違いありません.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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バックナンバー

64巻12号(2020年12月発行)

今月の特集1 血栓止血学のトピックス—求められる検査の原点と進化
今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

今月の特集1 基準範囲と臨床判断値を考える
今月の特集2 パニック値報告 私はこう考える

64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

64巻8号(2020年8月発行)

今月の特集1 AI医療の現状と課題
今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

今月の特集1 骨髄不全症の病態と検査
今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

今月の特集 超音波検査報告書の書き方—良い例,悪い例

64巻5号(2020年5月発行)

今月の特集1 中性脂肪の何が問題なのか
今月の特集2 EBLM(evidence based laboratory medicine)の新展開

64巻4号(2020年4月発行)

増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見

64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

64巻2号(2020年2月発行)

今月の特集1 検査でわかる二次性高血圧
今月の特集2 標準採血法アップデート

64巻1号(2020年1月発行)

今月の特集1 免疫チェックポイント阻害薬—押さえるべき特徴と注意点
今月の特集2 生理検査—この所見を見逃すな!

63巻12号(2019年12月発行)

今月の特集1 糖尿病関連検査の動向
今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

今月の特集1 腎臓を測る
今月の特集2 大規模自然災害後の感染症対策

63巻10号(2019年10月発行)

増刊号 維持・継続まで見据えた—ISO15189取得サポートブック

63巻9号(2019年9月発行)

今月の特集1 健診・人間ドックで指摘される悩ましい検査異常
今月の特集2 現代の非結核性抗酸菌症

63巻8号(2019年8月発行)

今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

63巻7号(2019年7月発行)

今月の特集1 造血器腫瘍の遺伝子異常
今月の特集2 COPDを知る

63巻6号(2019年6月発行)

今月の特集1 生理検査における医療安全
今月の特集2 薬剤耐性菌のアウトブレイク対応—アナタが変える危機管理

63巻5号(2019年5月発行)

今月の特集1 現在のHIV感染症と臨床検査
今月の特集2 症例から学ぶフローサイトメトリー検査の読み方

63巻4号(2019年4月発行)

増刊号 検査項目と異常値からみた—緊急・重要疾患レッドページ

63巻3号(2019年3月発行)

今月の特集 血管エコー検査 まれな症例は一度みると忘れない

63巻2号(2019年2月発行)

今月の特集1 てんかんup to date
今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

63巻1号(2019年1月発行)

今月の特集1 発症を予測する臨床検査—先制医療で5疾病に立ち向かう!
今月の特集2 薬の効果・副作用と検査値

62巻12号(2018年12月発行)

今月の特集1 海外帰りでも慌てない旅行者感染症
今月の特集2 最近の輸血・細胞移植をめぐって

62巻11号(2018年11月発行)

今月の特集1 循環癌細胞(CTC)とリキッドバイオプシー
今月の特集2 ACSを見逃さない!

62巻10号(2018年10月発行)

増刊号 感染症関連国際ガイドライン—近年のまとめ

62巻9号(2018年9月発行)

今月の特集1 DIC診断基準
今月の特集2 知っておきたい遺伝性不整脈

62巻8号(2018年8月発行)

今月の特集 女性のライフステージと臨床検査

62巻7号(2018年7月発行)

今月の特集1 尿検査の新たな潮流
今月の特集2 現場を変える!効果的な感染症検査報告

62巻6号(2018年6月発行)

今月の特集1 The Bone—骨疾患の病態と臨床検査
今月の特集2 筋疾患に迫る

62巻5号(2018年5月発行)

今月の特集1 肝線維化をcatch
今月の特集2 不妊・不育症医療の最前線

62巻4号(2018年4月発行)

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

今月の特集1 症例から学ぶ血友病とvon Willebrand病
今月の特集2 成人先天性心疾患

62巻2号(2018年2月発行)

今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス
今月の特集2 心腎連関を理解する

60巻13号(2016年12月発行)

今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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