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文献詳細

雑誌文献

臨床検査61巻1号

2017年01月発行

文献概要

心臓物語・10

心筋細胞がホルモンを分泌している!

著者: 島田達生12

所属機関: 1大分大学 2大分医学技術専門学校

ページ範囲:P.4 - P.4

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 年をとると,誰にでも増えるもの忘れ.さらに,心配で気になることが体力の衰えと尿失禁である.高齢者は夜を含め,トイレに何度もいくので,1日の尿量が多いように感じる.成人と比べてみると,1日の尿量は成人が1,000〜1,500cc,高齢者が700〜1,200cc.1回の尿量は成人が200〜400cc,高齢者が100〜150cc.このように,高齢者の尿量は10〜15%少ない.これは,心臓のポンプ機能が悪くなり,腎臓へ運ばれる血液の量が減り,尿が作られにくくなっているからである.

 [1]は,老齢ラット心耳,心房筋細胞の透過電子顕微鏡像である.その細胞は核の周囲と収縮性の筋原線維の間に多くの分泌果粒をもっている.さらに,核の近辺を拡大してみると([2]),粗面小胞体で合成された蛋白質がゴルジ装置で濃縮され,分泌果粒を産生している様相がうかがえ,まさに分泌機能が亢進状態といえる.この果粒は心房筋のみに存在し,心房特殊果粒と名付けられている.発見から30年間,この果粒はなんであるか全くわからず,謎であった.1981年に,カナダのボールドらが,心房特殊果粒が血管拡張と利尿作用などによって血圧を下げる働きをすることを突き止め,“心房性ナトリウム利尿ペプチド”(atrial natriuretic peptide:ANP)と名付けた.日本では寒川と松尾がヒトにおいてそのアミノ酸の配列を決定し,抗体作製に成功した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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