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文献詳細

雑誌文献

臨床検査61巻12号

2017年12月発行

文献概要

寄生虫屋が語るよもやま話・22

腐ったオシッコ—リーシュマニア症

著者: 太田伸生12

所属機関: 1鈴鹿医療科学大学保健衛生学部 2東京医科歯科大学

ページ範囲:P.1538 - P.1539

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 前回に続いて尿の話で恐縮している.世間を見渡せば,トイレが近い男性は結構多いものである.多分に精神的なものであろうが,膀胱の緊張性が少々過敏に過ぎるのであろう.中学生時分に,同級生で試験が始まろうかというときに必ずトイレに駆け込む男がいて,本人自ら“ベンジョミン(便所民)・フランクリン”と自虐名を名乗っていた.現在の職場の事務職員を伴って海外出張したことがあったが,彼も“ベンジョミン”で,飛行機で着席する間もなくトイレに行き,離陸してシートベルトサインが消えたら脱兎のごとくトイレに駆け込む図に思わず笑いを漏らしたものである.私の研究仲間にも“ベンジョミン”先生がいて,通常の人に比べてトイレに通う頻度が1.5倍はあろうかと思うが,その彼が尿を用いた免疫診断に命を懸けているのは,自身の排尿の際に浮かんだアイデアなのだろうか.ご本人の承諾を得ていないので実名は伏せる.彼とは同じ研究室で仕事をした仲であるが,寄生虫病の免疫診断を血清ではなく尿を使って行うというのである.尿中に排出される特異抗体を検出することで診断することができれば,採血よりも簡単な診断方法であることは疑いない.

 さて,尿検査では定性的に尿蛋白が陰性であることが正常である.当然ながら抗体はγグロブリン分画の蛋白質であるので,尿中には抗体は出てこないでしょう,というのが当初の議論であった.彼は“微量の蛋白質は通常の尿中にも出ているだろうし,ELISAのように感度が十分に高い方法を使えば特異抗体を検出できるはずだ”と主張を曲げない.それでは,と当時実験室で維持していた日本住血吸虫感染マウスの尿を集めて,それを使って抗体を検出できるかを調べることになった.しばらくして,彼から“尿は免疫診断に使えますよ”と言ってきたのである.“マウスではとんでもない量の虫を感染させているので可能だったのではないか?”と,なお疑問を抱く私に,それでは中国の流行地で,ヒトの尿を使って調べてみようということになり,早速検証することになった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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