文献詳細
文献概要
寄生虫屋が語るよもやま話・19
火炎放射器で攻撃せよ!—ミヤイリガイの対策
著者: 太田伸生12
所属機関: 1鈴鹿医療科学大学保健衛生学部 2東京医科歯科大学
ページ範囲:P.994 - P.995
文献購入ページに移動その中間宿主貝のなかで幼虫が発育して,水中に泳ぎだしてヒトに経皮感染するのが日本住血吸虫である.したがって,病気の流行を制圧するためには,中間宿主貝を撲滅させることが戦略の1つとなる.そのためにわれわれの先輩はいろんな策を巡らしてきた.ミヤイリガイは完全な水棲貝ではなく,湿り気のある草むらにゴロゴロところがっている.そのような貝のすみかをなくすことや,貝を殺す薬を散布することは誰もが思い付くことである.貝を殺す薬を散布することは確かに効果が高い.しかし,その戦略の最大のネックは環境汚染であった.貝を殺すと同時に,多くの場合は魚も殺すのである.かつて,千葉県木更津市にも小規模ながらミヤイリガイの生息フォーカスが存在した.小規模だから殺貝剤を散布すれば簡単になくせると考えたのであるが,その方法は取ることができなかった.貝の生息地からほど近くに潮干狩りが盛んな場所があったからである.ミヤイリガイを殺す薬をまくと,アサリやハマグリも殺すかもしれないということで,市の当局からNoといわれた.
掲載誌情報