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増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック Ⅴ 腎疾患 疾患の解説
溶連菌感染後糸球体腎炎
著者: 座間味亮1 古波蔵健太郎2 大屋祐輔3
所属機関: 1琉球大学医学附属病院第3内科 2琉球大学医学部附属病院血液浄化療法部 3琉球大学大学院医学研究科循環器・腎臓・神経内科学講座
ページ範囲:P.470 - P.471
文献購入ページに移動溶連菌感染後糸球体腎炎(post streptococcal acute glomerulo nephritis:PSAGN)は溶連菌による先行感染後,1〜3週間の潜伏期間を経て発症する急性糸球体腎炎である.主に4〜12歳の小児に発症し,男女比は1〜2:1で男性にやや多い.生活環境の改善や抗菌薬の進歩により,溶連菌感染が減少ないしは早期に治療されるため,本邦における本症の発症率は著しく低下している1).
PSAGNはA群β溶連菌によって産生される腎炎惹起性抗原によって発症する.溶連菌感染に伴い,nephritis-associated plasmin receptor(NAPlr)やstreptococcal pyogenic exotoxin B(speB)という腎炎惹起性抗原が体内で産生されると,これらの抗原は抗原抗体反応や補体活性化を介して炎症を惹起する.これらの免疫複合体は血管内皮下に沈着する性質があるが,糸球体血管内皮は有窓細胞と呼ばれ,内皮細胞に穴が多数空いている構造となっている.このような構造から,血管内皮下に沈着した免疫複合体は,補体や炎症細胞の豊富な血液循環とほぼ直接接しており,血管内皮において強い炎症が惹起される2).そのため糸球体毛細血管内に炎症細胞が著明に浸潤し,光学顕微鏡上“富核”と表現されるように,あたかも糸球体毛細血管が炎症細胞で“目詰まり”したような,びまん性管内増殖性糸球体腎炎という組織像を呈する.それにより糸球体毛細血管腔は狭小化し,時に閉塞する(図1).また,血管内皮における強い炎症は基底膜の断裂をきたし,そこから漏れ出た血液は血尿となり,また通常濾過されるはずのない蛋白も尿中に排泄されるようになる.
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