文献詳細
文献概要
増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック Ⅴ 腎疾患 疾患の解説
薬剤性腎障害
著者: 日比野祐香1 竜崎崇和1
所属機関: 1東京都済生会中央病院腎臓内科
ページ範囲:P.492 - P.493
文献購入ページに移動薬剤性腎障害とは「薬剤の投与により,新たに発症した腎障害,既存の腎障害のさらなる悪化を認める場合」と定義される.薬剤性腎障害を引き起こす薬剤は抗菌薬,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs),抗癌剤,など多岐にわたり多数存在する.急性腎障害(acute kidney injury:AKI)の約20%が薬剤性とも報告されている.
薬剤の多くは肝臓で水酸化・抱合化など様々な機序を介して代謝された後,胆汁中に排泄されるものと,血清アルブミンと結合して流血中を循環し,腎臓を介して尿中に排泄されるものがある.特に高い極性あるいは低い血清蛋白結合率の薬剤は,腎臓を介して排泄されやすいとされ,この排泄過程で腎障害が惹起される.腎臓からの薬剤の排泄は糸球体濾過,尿細管分泌による管腔側への排出と,管腔側からの尿細管再吸収の総和であり,それぞれの過程で薬剤性腎障害を引き起こす可能性がある.一般的な薬剤の分子量は小さいため糸球体で濾過される.アルブミンなどの血中蛋白質に結合する薬剤は通常濾過されない.遊離型の薬剤は糸球体で濾過され,その量は遊離型の割合に応じる.蛋白結合型薬剤は糸球体で濾過されないが,一部は尿細管による分泌を受け排泄される.尿細管分泌は主として近位尿細管細胞による経細胞輸送により行われる.そのため薬剤性腎障害は近位尿細管で生じやすい.
参考文献
掲載誌情報