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文献詳細

雑誌文献

臨床検査62巻4号

2018年04月発行

文献概要

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック Ⅵ 泌尿器疾患 疾患と尿沈渣成分 ①尿路・性器感染症

放射線性膀胱炎

著者: 山辺拓也1 土谷順彦1

所属機関: 1山形大学医学部腎泌尿器外科学講座

ページ範囲:P.500 - P.501

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病態

 放射線性膀胱炎は骨盤内の放射線治療に起因する出血性膀胱炎であり,骨盤内への放射線照射後6カ月〜10年で発症するとされている1).放射線治療の合併症のなかでも治療困難なものの1つであり,ひとたび発症してしまうと血尿,膀胱刺激症状が認められ,重症例では血尿のコントロールが困難となり,尿路変更術が必要になったり,時には致命的になったりすることさえある2).重篤な放射線性膀胱炎をきたした放射線治療の原疾患としては子宮頸癌が最も多く,ほかに直腸癌,膀胱癌,前立腺癌などが原因となり得る.照射線量が50Gy以下では発症頻度は約3%に過ぎないが,80Gyを越すと12%に達するとの報告や,90Gy以上ではGrade 2,3(表1)3)の放射線性膀胱炎の発症頻度が急増するといった報告が認められ,照射線量が増えるに従って発症の危険性が高くなることがわかっている4)

 放射線障害の本態は血管内皮細胞による進行性の閉塞性動脈内膜炎であり,組織が傍血管性,低細胞性,低酸素状態になることとされている.病理学的には粘膜浮腫,血管拡張,閉塞性動脈内膜炎,平滑筋の線維化が認められる.通常の創傷治癒に必要な線維芽細胞が機能しないため,長期的には膀胱の線維化をきたす1)

参考文献

1)宮里朝矩,湯佐祚子,翁長朝浩,他:放射線性出血性膀胱炎に対する高気圧酸素治療の臨床的検討.日泌会誌 89:552-556,1998
2)稲元輝生,小村和正,上原博史,他:水酸化アルミニウム・マグネシウム合剤の膀胱内単回注入が奏効した放射線性膀胱炎に起因する膀胱タンポナーデの1例.泌外 23:1637-1642,2010
3)Cox JD,Stetz J,Pajak TF:Toxicity criteria of the Radiation Therapy Oncology Group (RTOG) and the European Organization for Research and Treatment of Cancer (EORTC).Int J Radiat Oncol Biol Phys 31:1341-1346,1995
4)河本寛治,野口純男,桜本敏夫,他:放射線性膀胱炎の臨床的観察.泌紀 38:395-398,1992
5)柳雅人,西村泰司,栗田晋,他:放射線性出血性膀胱炎にプレドニゾロンが有効であった1例.日泌会誌 102:600-602,2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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