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増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック Ⅵ 泌尿器疾患 疾患と尿沈渣成分 ②尿路・性器腫瘍
尿膜管癌
著者: 辻野拓也1 小村和正1 東治人1
所属機関: 1大阪医科大学泌尿生殖・発達医学講座泌尿器科学教室
ページ範囲:P.522 - P.523
文献購入ページに移動尿膜管は卵黄囊尾方の壁の憩室として発生した尿膜が,膀胱の拡張に伴い巻き込まれ形成された管状物であり,出生後に膀胱底から臍まで続く正中臍索となる.尿膜管は上皮を有する管腔,固有層,筋層,被膜から構成され,独立した構造として胎生期から老年に至るまで存続することが立証されている.尿膜管は膀胱頂部から3〜10cmの円錐状索状物であり,その頂部は臍と膀胱頂部の間の下1/3にあり,内径は膀胱端で8mm,円錐形の頂点で1〜2mmである.約1/3の症例で膀胱端は膀胱粘膜下層で盲端になっているが,残り1/3は膀胱内腔と微細な交通を有している.尿膜は胎生後期までに狭くなり,尿膜管となり出生時には閉じるか,出生直後に正中臍索を形作る.尿膜管遺残とは尿膜管の一部またはすべてが閉じきらない奇形であり,悪性腫瘍の発生は少ない.発生する悪性腫瘍の大多数が癌腫である.
このように尿膜管は独立した構造であるはずだが,「腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約」では膀胱腺癌の一種として分類されている.全膀胱癌の約0.14〜2.7%を占めており,組織型は腺癌が最も多く86.3%を占め,そのうち53.4%がムチンを産生している.しかし,尿膜管癌は腺癌だけではなく,移行上皮癌や扁平上皮癌およびこれらの癌が混ざりあっているものまでみられ,悪性奇形種や腺棘細胞癌などもみられる.尿膜管癌の原因は現時点でも不明である.
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