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増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック Ⅵ 泌尿器疾患 疾患と尿沈渣成分 ③その他
膀胱・腸瘻
著者: 多武保光宏1
所属機関: 1杏林大学医学部泌尿器科学教室
ページ範囲:P.533 - P.535
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膀胱・腸瘻は膀胱と大腸ないし小腸とに交通(瘻孔)ができる疾患で,原因として憩室炎や大腸癌,クローン病などの腸疾患が多くを占めている.そのほかに,放射線治療や感染,外傷,医原性(術後)などもある.原因として最も多いのは憩室炎(65〜75%)で,次いで悪性腫瘍(10〜15%),クローン病(5〜6%)となっている.好発年齢は55〜65歳だが,クローン病の場合は若年者にも発症することがある.憩室炎患者の約2%に膀胱・腸瘻を経験することが報告され,また,クローン病患者400名を対象とする10年以上の観察で約2%に膀胱・腸瘻を認めたとの報告もある1).発症部位としては,憩室炎の場合は大腸に多く,クローン病の場合は回腸に多いとされている1).
膀胱・腸瘻の症状には尿路由来ないし腸管由来のものがあるが,早期では尿路症状が主体となる.尿路症状として気尿が最も多く(52〜77%),そのほかに尿路感染症症状として頻尿や尿意切迫などがある(44〜45%)1).膀胱・腸瘻に起因した尿路感染症は,抗菌薬に抵抗性ないし再発性であることがしばしばある.腸管由来の症状には糞尿や肛門のしぶりなどがあり,糞尿に関しては膀胱・腸瘻の36〜51%にみられる1).ただ,膀胱・腸瘻の症状で最も典型的なのは気尿であり,逆に気尿を認めた場合にはまず膀胱・腸瘻の存在を疑うべきである.そこで,膀胱・腸瘻を疑う患者への検査として,まず行うべき尿沈渣について解説する.
膀胱・腸瘻は膀胱と大腸ないし小腸とに交通(瘻孔)ができる疾患で,原因として憩室炎や大腸癌,クローン病などの腸疾患が多くを占めている.そのほかに,放射線治療や感染,外傷,医原性(術後)などもある.原因として最も多いのは憩室炎(65〜75%)で,次いで悪性腫瘍(10〜15%),クローン病(5〜6%)となっている.好発年齢は55〜65歳だが,クローン病の場合は若年者にも発症することがある.憩室炎患者の約2%に膀胱・腸瘻を経験することが報告され,また,クローン病患者400名を対象とする10年以上の観察で約2%に膀胱・腸瘻を認めたとの報告もある1).発症部位としては,憩室炎の場合は大腸に多く,クローン病の場合は回腸に多いとされている1).
膀胱・腸瘻の症状には尿路由来ないし腸管由来のものがあるが,早期では尿路症状が主体となる.尿路症状として気尿が最も多く(52〜77%),そのほかに尿路感染症症状として頻尿や尿意切迫などがある(44〜45%)1).膀胱・腸瘻に起因した尿路感染症は,抗菌薬に抵抗性ないし再発性であることがしばしばある.腸管由来の症状には糞尿や肛門のしぶりなどがあり,糞尿に関しては膀胱・腸瘻の36〜51%にみられる1).ただ,膀胱・腸瘻の症状で最も典型的なのは気尿であり,逆に気尿を認めた場合にはまず膀胱・腸瘻の存在を疑うべきである.そこで,膀胱・腸瘻を疑う患者への検査として,まず行うべき尿沈渣について解説する.
参考文献
1)Badlani GH, De Ridder DJMK, Mettu JR, et al:Urinary tract fis-tulae. In: Campbell-Walsh Urology, 11th ed (Wein AJ, Kavoussi L, Partin AW, et al, eds), Elsevier, Philadelphia,pp2129-2132,2016
2)Jafri SZH, Roberts JL, Berger BD:Fistulas of the genitourinary tract. In: Clinical Urology, 2nd ed (Pollack HM, McClennan BL, eds), W.B. Saunders company, Philadelphia,pp3004-3006,2000
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