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文献詳細

雑誌文献

臨床検査62巻4号

2018年04月発行

文献概要

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック Ⅶ 全身性疾患

脱水

著者: 阿部倫明1

所属機関: 1東北大学病院総合地域医療教育支援部

ページ範囲:P.541 - P.543

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病態

 脱水は水分や塩分の喪失に対して十分な補給ができない場合に生じる(水分・塩分の摂取不足).脱水の原因としては,発汗・不感蒸泄の亢進(発熱時や高温環境下,激しい運動後など),消化管からの水分喪失(下痢,嘔吐など),不適切な利尿亢進状態,出血,浮腫などが挙げられる.不適切な利尿亢進状態とは,糖尿病性ケトアシドーシスなど高血糖時や過剰な浸透圧利尿剤の使用時に認められる浸透圧利尿亢進,過剰なループ利尿剤・サイアザイド利尿剤・K保持性利尿剤の投与によるNa利尿亢進,未治療の尿崩症や不適切なバソプレッシン受容体拮抗薬の使用による水利尿の亢進などの状態を指す.なお,水多飲時に水利尿の亢進や,高食塩摂取時に圧利尿曲線に従ったNa利尿の亢進が認められるが,いずれも摂取過剰に対する生理学的な利尿現象であり脱水状態にならない.

 脱水の病態は,細胞外液(血液,間質液)や細胞内液の不足による.前者では血管内脱水が生じ有効循環血液量が低下し急性循環不全(低血圧,ショック)が発症しうる.ショックによって賦活される交感神経や副腎機能の亢進した症状(頻脈,四肢冷汗など)にも注意する.後者では痙攣やこむら返りなどの神経学的症状を生じやすくなる.生理学的に慢性的な細胞内液脱水状態である高齢者は重症の脱水になりやすいので注意を要する.

参考文献

1)佐々木彰:尿沈渣のポイント 円柱を中心に.レジデントノート 19:1051-1058,2017.
2)AKI(急性腎障害)診療ガイドライン作成委員会(編):AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016.日腎会誌 59:419-533,2017
3)谷口茂夫:考える腎臓病学,メディカルサイエンス・インターナショナル,2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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