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文献詳細

雑誌文献

臨床検査64巻10号

2020年10月発行

文献概要

増刊号 がんゲノム医療用語事典

3.がんゲノム自体に関する用語

著者: 柳田絵美衣12

所属機関: 1慶應義塾大学病院臨床検査科ゲノム検査室 2慶應義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット

ページ範囲:P.1109 - P.1122

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生殖細胞系列遺伝子変異(germline mutation),体細胞遺伝子変異(somatic mutation)

 生殖細胞(精子や卵子)に遺伝子変異が存在するものを“生殖細胞系列遺伝子変異(germline mutation)”,生殖細胞以外の細胞(体細胞)に存在する遺伝子変異を“体細胞遺伝子変異(somatic mutation)”として区別する(図1).生殖細胞系列遺伝子変異は子どもや孫など次世代に受け継がれる(遺伝する)可能性があるが,体細胞遺伝子変異は遺伝しない.つまり,体細胞遺伝子変異はその人個人に起こるものであり,“ケガ”のようなものである.例えば,道で転んで足を擦りむいたとしても,そのケガをした人から生まれた子どもに,その足のケガは遺伝しない.体細胞遺伝子変異とは,このケガと同じように,その人個人だけがもつものである.

 ヒトは同じ遺伝子を2本もち,1本は父親(精子)から,もう1本は母親(卵子)から受け継いでいる.遺伝子修復に関連する遺伝子(特にがん抑制遺伝子)では,1本の遺伝子に変異が起こって機能を喪失していても,もう1本の遺伝子が正常であり機能していれば,がん化を抑制することが可能である.しかし,遺伝子に変異を生じている精子または卵子が受精した場合,生まれつき全身の細胞内の1本の遺伝子に変異(生殖細胞系列遺伝子変異)をもつことになる.つまり,正常に機能する遺伝子が最初から1本のみであり,スペアの遺伝子がない状態となっているため,正常に機能する遺伝子に変異が生じると,がん化する(図2).

参考文献

●日本遺伝子分析科学同学院遺伝子分析科学認定士制度委員会(編):遺伝子検査技術 遺伝子分析科学認定士テキスト,宇宙堂八木書店,2007
●奈良信雄,吉田光明,東田修二,他:臨床検査学講座 遺伝子・染色体検査学,医歯薬出版,2001
●西原広史:がんと正しく戦うための遺伝子検査と精密医療 いま,医療者と患者が知っておきたいこと,羊土社,2017

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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