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文献詳細

雑誌文献

臨床検査64巻10号

2020年10月発行

文献概要

増刊号 がんゲノム医療用語事典

5.検査(核酸抽出,核酸取り扱い,核酸品質管理:遺伝子検査)に関する用語

著者: 井上博文12

所属機関: 1岡山大学病院病理診断科・病理部,医療技術部 2岡山大学大学院医歯薬学総合研究科臨床遺伝子医療学

ページ範囲:P.1133 - P.1138

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QC(quality check)

 2019年に一部の網羅的がん遺伝子パネル検査〔FoundationOne®CDxがんゲノムプロファイル(中外製薬社),OncoGuideTM NCCオンコパネルシステム(シスメックス社)〕が保険収載され,検査数が増加している.使用する検体は,摘出臓器などを半永久的に利用できるように加工されたホルマリン固定パラフィン包埋(formalin fixed paraffin embedded:FFPE)ブロックである.形態保持に優れたFFPEブロックではあるが,核酸品質については作製時の操作方法や保管状態に大きく左右される.特に固定状況(詳細な冷虚血時間や固定時間,使用した固定液など)による影響は大きく,その時々の扱い方によっては核酸品質の低下が懸念される.

 ゲノム診療に使用する核酸抽出試薬は標準化された市販薬を使用することが望ましいとされているが,キット間での純度や収量に差異がある.「ゲノム診療用病理組織検体取扱い規程」1)においては,がんゲノム遺伝子パネル検査前には,使用する核酸の品質確認(quality check:QC)が推奨されている.核酸のQCを行うことを推奨する理由は第一に,解析結果の信頼性である.解析する核酸の品質を事前に知ることで,不確かなデータに対して検体品質面から適正な対応をすることが可能である.第二に,結果返却までの時間(日数,turn around time:TAT)の短縮である.品質不良や核酸収量不足情報を得ることで,他のパネル検査や遺伝子解析検査,収量不足による追加薄切や核酸濃縮などの措置を行うことで検査エラーによるTAT延長を防ぐことができる.

参考文献

1)日本病理学会:ゲノム診療用病理組織検体取扱い規程,2018(http://pathology.or.jp/genome_med/pdf/textbook.pdf)(最終アクセス:2020年7月13日)
2)臨床検査振興協議会:がん遺伝子パネル検査の品質・精度の確保に関する基本的考え方(第2.0版),2019(http://www.jpclt.org/info/201905/data/doc2.pdf)(最終アクセス:2020年7月14日)
3)木本路子:核酸の分離法の種類と使い分け.実験医学別冊 目的別で選べる核酸実験の原理とプロトコール—分離・精製からコンストラクト作製まで,効率を上げる条件設定の考え方と実験操作が必ずわかる(平尾一郎,胡桃坂仁志編),羊土社,pp53-60,2011
4)柴山祥枝:核酸(DNA・RNA)の定量法 吸光分析法と蛍光分析法を中心に.ぶんせき 7:268-274,2018

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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