文献詳細
文献概要
増刊号 がんゲノム医療用語事典
5.検査(核酸抽出,核酸取り扱い,核酸品質管理:遺伝子検査)に関する用語
著者: 井上博文12
所属機関: 1岡山大学病院病理診断科・病理部,医療技術部 2岡山大学大学院医歯薬学総合研究科臨床遺伝子医療学
ページ範囲:P.1133 - P.1138
文献購入ページに移動2019年に一部の網羅的がん遺伝子パネル検査〔FoundationOne®CDxがんゲノムプロファイル(中外製薬社),OncoGuideTM NCCオンコパネルシステム(シスメックス社)〕が保険収載され,検査数が増加している.使用する検体は,摘出臓器などを半永久的に利用できるように加工されたホルマリン固定パラフィン包埋(formalin fixed paraffin embedded:FFPE)ブロックである.形態保持に優れたFFPEブロックではあるが,核酸品質については作製時の操作方法や保管状態に大きく左右される.特に固定状況(詳細な冷虚血時間や固定時間,使用した固定液など)による影響は大きく,その時々の扱い方によっては核酸品質の低下が懸念される.
ゲノム診療に使用する核酸抽出試薬は標準化された市販薬を使用することが望ましいとされているが,キット間での純度や収量に差異がある.「ゲノム診療用病理組織検体取扱い規程」1)においては,がんゲノム遺伝子パネル検査前には,使用する核酸の品質確認(quality check:QC)が推奨されている.核酸のQCを行うことを推奨する理由は第一に,解析結果の信頼性である.解析する核酸の品質を事前に知ることで,不確かなデータに対して検体品質面から適正な対応をすることが可能である.第二に,結果返却までの時間(日数,turn around time:TAT)の短縮である.品質不良や核酸収量不足情報を得ることで,他のパネル検査や遺伝子解析検査,収量不足による追加薄切や核酸濃縮などの措置を行うことで検査エラーによるTAT延長を防ぐことができる.
参考文献
掲載誌情報