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雑誌詳細

文献概要

増刊号 よくある質問にパッと答えられる—見開き! 検査相談室 一般検査

尿沈渣検査でアデノウイルス感染症の評価はできますか?

著者: 井上真由1

所属機関: 1筑波大学附属病院検査部

ページ範囲:P.304 - P.305

はじめに

 同種造血幹細胞移植(HSCT)後にはアデノウイルス(AdV)やBKウイルス(BKV)などによる出血性膀胱炎(HC)が発生する可能性がある.特にアデノウイルス性出血性膀胱炎(AdV-HC)の合併は致死的経過となりうるため,AdVを早期に検出する必要がある.

 原因となるAdVは11型が多く,AdV-HCの診断は,肉眼的血尿の観察と,PCR法などでの尿中AdVの検出によってなされるが,PCR法は結果が出るのに時間を要し,いまだ薬事承認もされていない1).そこで,近年,保険収載され,かつ簡易的に検査できる尿沈渣検査でAdV感染を疑う細胞が検出できると報告され始めている2,3)

 わが国におけるHSCT後の遅発性(前処置終了後10日以降)HCのAdVによる発症頻度は約10%と報告されており,HSCT後患者の尿沈渣中に以下の細胞を認めた際には,AdV感染細胞を疑い,鏡検する必要がある.

 尿沈渣検査で,HSCT後患者のAdV感染細胞を見落とさず検出することは重要である.

参考文献

1)日本造血細胞移植学会:造血細胞移植ガイドライン ウイルス感染症の予防と治療 出血性膀胱炎,日本造血細胞移植学会,2018
2)伊藤園江:移植後ウイルス感染症のモニタリングとしての尿沈渣の役割—BKウイルスおよびアデノウイルスを中心に.Med Technol 43:1204-1209,2015
3)白濱早紀,川満紀子,上田沙央理,他:尿沈渣でアデノウイルス感染が疑われた症例.日臨技九州医検会 52回:94,2017

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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