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増大号 検査血液学レッスン 検査結果の乖離をどう判断するか 3章 フローサイトメトリー
検体保存方法によるMPOおよびリンパ球サブセット検査に対する影響
著者: 池亀彰茂1
所属機関: 1香川県立保健医療大学保健医療学部臨床検査学科
ページ範囲:P.1160 - P.1163
文献購入ページに移動はじめに
近年,医療技術の進歩によって血液検査分野でも検査項目が増えたため,臨床現場からは信頼性の高い検査結果が望まれている.フローサイトメトリー機器を用いたリンパ球サブセットや造血器腫瘍解析は,顕微鏡下による細胞形態像と併せて評価することで,より臨床に貢献することができる検査である.ただし,フローサイトメトリー検査における検体保存,設定および解析方法を正しく実施していることが条件となる.
本稿では,フローサイトメトリー検査による結果値を正しく報告することを目的にして,検体保存,標識蛍光色素選択,コンペンセーションから腫瘍細胞のゲーティング方法について詳しく解説する.
フローサイトメトリー標準化のため米国臨床検査標準化協議会(National Committee for Clinical Laboratory Standards:NCCLS)はapproved guidelineを発行している1,2).わが国においても日本臨床検査標準協議会(Japanese Committee for Clinical Laboratory Standards:JCCLS)から末梢血リンパ球表面抗原検査に関するガイドラインが発表された3).このガイドラインでは,血液検体からのリンパ球の回収は種々の因子が関係しているため,検体は採血後すぐに処理するのが理想的であることが記載されており,それが不可能な場合は各施設において使用抗凝固剤,保存温度,試料調整法などについて新鮮検体と比較・検討しなければならないとしている.腫瘍細胞では,正常細胞と比べて細胞が壊れやすいことや検体材料によっても検体保存条件は異なることを理解しておくことが重要である.
JCCLSのガイドラインでは,18〜22℃で保存して24時間以内に測定するのが望ましいと記載されているが,藤巻ら4)の報告では,24時間室温で放置した検体で死細胞比率の増加を認めたため,採血後6時間以内に測定することが望ましいとしている.特に7-AAD(7-amino-actinomycin D)を用いた死細胞の検討において,ヘパリン採血管と比較してエチレンジアミン四酢酸二カリウム塩二水和物(ethylenediaminetetraacetic acid dipotassium salt dihydrate:EDTA-2K)含有採血管が24時間後では死細胞が顕著となると報告している.
今回,筆者らは,健常者の末梢血を用いて細胞内ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase:MPO)およびリンパ球サブセット(CD3,CD19)の経時的影響について検討した.EDTA-2K含有採血管で採血した血液を室温保存(22℃),冷蔵保存(5℃),EDTA-2K全血へ10%ウシ胎仔血清(fetal bovine serum:FBS)+RPMI 1640培地等量混和後に冷蔵保存(5℃)した全血検体を0,6,24,48hごとの各抗原発現に対する経時的影響を調べた.室温保存(22℃)とした保存については,施設環境や気候によって異なるため22℃に設定したインキュベーター内へ検体を保管して検討した.
室温保存と冷蔵保存における側方散乱(side scatter:SS)およびCD45プロット図では,冷蔵保存は各白血球の分画は保たれるが,室温保存では24時間後には好中球分画に対する影響が著しい.一方,冷蔵保存したEDTA-2K全血やRPMI 1640培地等量混和したサンプルでは各白血球分画は保たれていた.しかし,48時間後には冷蔵保存したEDTA-2K全血においても好中球分画が拡散する傾向を認めた.RPMI 1640培地等量混和して冷蔵保存したサンプルでは各白血球分画に対する影響が最も少なかった(図1).
近年,医療技術の進歩によって血液検査分野でも検査項目が増えたため,臨床現場からは信頼性の高い検査結果が望まれている.フローサイトメトリー機器を用いたリンパ球サブセットや造血器腫瘍解析は,顕微鏡下による細胞形態像と併せて評価することで,より臨床に貢献することができる検査である.ただし,フローサイトメトリー検査における検体保存,設定および解析方法を正しく実施していることが条件となる.
本稿では,フローサイトメトリー検査による結果値を正しく報告することを目的にして,検体保存,標識蛍光色素選択,コンペンセーションから腫瘍細胞のゲーティング方法について詳しく解説する.
フローサイトメトリー標準化のため米国臨床検査標準化協議会(National Committee for Clinical Laboratory Standards:NCCLS)はapproved guidelineを発行している1,2).わが国においても日本臨床検査標準協議会(Japanese Committee for Clinical Laboratory Standards:JCCLS)から末梢血リンパ球表面抗原検査に関するガイドラインが発表された3).このガイドラインでは,血液検体からのリンパ球の回収は種々の因子が関係しているため,検体は採血後すぐに処理するのが理想的であることが記載されており,それが不可能な場合は各施設において使用抗凝固剤,保存温度,試料調整法などについて新鮮検体と比較・検討しなければならないとしている.腫瘍細胞では,正常細胞と比べて細胞が壊れやすいことや検体材料によっても検体保存条件は異なることを理解しておくことが重要である.
JCCLSのガイドラインでは,18〜22℃で保存して24時間以内に測定するのが望ましいと記載されているが,藤巻ら4)の報告では,24時間室温で放置した検体で死細胞比率の増加を認めたため,採血後6時間以内に測定することが望ましいとしている.特に7-AAD(7-amino-actinomycin D)を用いた死細胞の検討において,ヘパリン採血管と比較してエチレンジアミン四酢酸二カリウム塩二水和物(ethylenediaminetetraacetic acid dipotassium salt dihydrate:EDTA-2K)含有採血管が24時間後では死細胞が顕著となると報告している.
今回,筆者らは,健常者の末梢血を用いて細胞内ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase:MPO)およびリンパ球サブセット(CD3,CD19)の経時的影響について検討した.EDTA-2K含有採血管で採血した血液を室温保存(22℃),冷蔵保存(5℃),EDTA-2K全血へ10%ウシ胎仔血清(fetal bovine serum:FBS)+RPMI 1640培地等量混和後に冷蔵保存(5℃)した全血検体を0,6,24,48hごとの各抗原発現に対する経時的影響を調べた.室温保存(22℃)とした保存については,施設環境や気候によって異なるため22℃に設定したインキュベーター内へ検体を保管して検討した.
室温保存と冷蔵保存における側方散乱(side scatter:SS)およびCD45プロット図では,冷蔵保存は各白血球の分画は保たれるが,室温保存では24時間後には好中球分画に対する影響が著しい.一方,冷蔵保存したEDTA-2K全血やRPMI 1640培地等量混和したサンプルでは各白血球分画は保たれていた.しかし,48時間後には冷蔵保存したEDTA-2K全血においても好中球分画が拡散する傾向を認めた.RPMI 1640培地等量混和して冷蔵保存したサンプルでは各白血球分画に対する影響が最も少なかった(図1).
参考文献
1)National Committee for Clinical Laboratory Standards (NCCLS):Clinical Applications of Flow Cytometry: Quality Assurance and Immunophenotyping of Peripheral Blood Lymphocytes, Approved Guideline. NCCLS document H42-A, NCCLS,1997
2)National Committee for Clinical Laboratory Standards (NCCLS):Clinical Application of Flow Cytometry: Quality Assurance and Immunophenotyping of Leukemia cells Approved guideline. NCCLS document H43-A, NCCLS,1998
3)日本臨床検査標準協議会血液検査標準化検討委員会フローサイトメトリーワーキンググループ:フローサイトメトリーによる末梢血リンパ球表面抗原検査に関するガイドライン(JCCLS H1-P V2.0).日臨検標準会誌 15:123-136,2000
4)藤巻慎一,他:試料採取における抗凝固剤と保存.Cytometry Res 12:33-37,2002
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