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文献詳細

雑誌文献

臨床検査66巻10号

2022年10月発行

文献概要

増大号 検査血液学レッスン 検査結果の乖離をどう判断するか 4章 凝固

—APTT試薬間での測定値の乖離—凝固因子感受性

著者: 桝谷亮太1

所属機関: 1大阪医科薬科大学病院中央検査部

ページ範囲:P.1208 - P.1211

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はじめに

 活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time:APTT)は,接触相の活性化を起点として始まる内因系凝固反応を反映する検査であり,血友病をはじめとする先天性内因系凝固因子欠乏症やループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant:LA),凝固因子インヒビターの存在によって凝固時間が延長する.また,APTTは上記の凝固異常症以外にも,未分画ヘパリンや直接経口抗凝固薬などの抗凝固療法のモニタリングにも用いられており,施設内でも日常的に実施される有用な検査である.その反面,病態や疾患に対する感度・特異度における試薬間差が課題でありAPTTの直接的な標準化は困難である1).主な理由として,市場に流通しているAPTT試薬の組成や濃度が多岐にわたることが挙げられる.執筆時点における代表的なAPTT試薬の一覧を表12)に示す.

 APTT試薬は第1試薬として,陰性荷電物質である活性化剤やリン脂質を含む溶液と,第2試薬として塩化カルシウム溶液で構成される.この活性化剤およびリン脂質の種類や濃度がAPTTに影響を及ぼす要因として重要であり,APTT試薬間での測定値の乖離を生じさせる原因となっている.そのため,測定値の乖離を理解するためには,検査に用いるAPTT試薬の組成を把握しておくことが必須である.特にLAの検出においては用いるAPTT試薬によって感受性が大きく異なることが知られているが,これは本号の「ループスアンチコアグラント感受性」の項で詳細に解説されるためそちらを参照していただきたい.

 本稿では,APTT試薬間での測定値の乖離のうち,凝固因子感受性について解説する.

参考文献

1)山崎哲,他:APTT検査およびループスアンチコアグラント検査の標準化.日血栓止血会誌 27:636-643,2016
2)桝谷亮太,他:APTT試薬の違いが接触因子欠乏症の診断に与える影響—特に血漿プレカリクレイン欠乏症のAPTT測定に対する活性化剤の影響.日血栓止血会誌 19:33-40,2018
3)家子正裕,他:抗凝固療法の現状と凝固第Ⅺ(a)因子阻害薬の開発状況.日血栓止血会誌 31:619-623,2020

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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