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増大号 検査血液学レッスン 検査結果の乖離をどう判断するか 4章 凝固
小児の一過性APTT延長
著者: 岡田直樹1 藤澤麗子1 犀川太1
所属機関: 1金沢医科大学小児科
ページ範囲:P.1228 - P.1231
文献購入ページに移動活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time:APTT)に影響する病態は,APTT検査を構成する要素別に分けて考えると理解しやすい.APTT検査は,リン脂質依存性凝固時間の1つであり,被験者血漿中の凝固因子とAPTT試薬(凝固第Ⅻ因子と第Ⅺ因子の試験管内活性化を目的とした活性化剤,塩化カルシウムおよびリン脂質を含む)を用いて実施される.したがって,①内因系および共通系の凝固因子活性低下(凝固因子の量と機能の低下およびインヒビターの存在)と②抗リン脂質抗体の存在によりAPTTは延長する.具体的には,先天性凝固異常症として凝固第Ⅷ因子や第Ⅸ因子が欠乏する血友病と凝固第Ⅷ因子の運搬蛋白であるvon Willebrand因子の不足や機能異常が原因のvon Willebrand病があり,一方,後天性凝固異常症として凝固因子に対するインヒビターの出現やリン脂質に対する自己抗体が凝固反応を遅延させる抗リン脂質抗体症候群が知られている.
本稿では,感染症を契機とした小児の一過性抗リン脂質抗体陽性について解説する.本病態では“APTT延長があるにもかかわらず出血症状や血栓症状は伴わない”という“検査結果と臨床症状の乖離”に直面する.自験例の臨床的特徴とその経過を提示し,小児の後天性APTT延長を認めた場合の対応について概説する.
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