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文献概要
増大号 検査血液学レッスン 検査結果の乖離をどう判断するか 4章 凝固
—フィブリノゲンの偽低値—ヘパリン・トロンビン阻害薬の影響
著者: 藤森祐多1
所属機関: 1慶應義塾大学病院臨床検査技術室
ページ範囲:P.1232 - P.1235
文献購入ページに移動フィブリノゲン測定法
フィブリノゲン測定法を表1に示す.日常の臨床検査で最も用いられているフィブリノゲン測定法はトロンビン時間法(Clauss法)であり,自動分析装置で実施することが可能である.トロンビン時間法は試薬としてトロンビンを血漿に加えフィブリノゲンからフィブリンが形成するまでの凝固時間を測定し,フィブリノゲン量に換算する比較的簡単な原理に基づく検査法である(図1).血漿に加えるトロンビン試薬は血漿中の抗トロンビン物質(アンチトロンビン,ヘパリンコファクターⅡ)の影響を抑えるために過剰量が含まれているものの,試薬ごとにトロンビン濃度が異なることが知られている.過剰量のトロンビンが血漿中のフィブリノゲンをフィブリンに変換するために,本来は生体内で生じる少量のトロンビンが凝固第Ⅷ因子や凝固第Ⅴ因子といった凝固因子を活性化することによって起こるトロンビンポジティブフィードバックは検査原理上,関与しない.
本稿で最も伝えたいことは,フィブリノゲン測定試薬中には過剰なトロンビンが含まれていることから,トロンビン活性を阻害するような薬剤の影響に対しても比較的安定的に測定を行うことができるため,日常臨床でフィブリノゲン測定をするなかでトロンビン阻害薬によってフィブリノゲンが偽低値に測定されるという可能性をそれほど心配する必要はないということである.ただし,トロンビン活性を阻害するような薬剤が試薬のトロンビン活性を上回るほど血中に存在していた場合には,フィブリノゲンがフィブリンに変換されるまでの凝固時間が延長し,結果としてフィブリノゲンの偽低値を引き起こす可能性がある.日常の臨床で使用されるトロンビン活性を阻害する薬剤として,未分画ヘパリンや直接トロンビン阻害薬が挙げられる(表2).
フィブリノゲン測定法を表1に示す.日常の臨床検査で最も用いられているフィブリノゲン測定法はトロンビン時間法(Clauss法)であり,自動分析装置で実施することが可能である.トロンビン時間法は試薬としてトロンビンを血漿に加えフィブリノゲンからフィブリンが形成するまでの凝固時間を測定し,フィブリノゲン量に換算する比較的簡単な原理に基づく検査法である(図1).血漿に加えるトロンビン試薬は血漿中の抗トロンビン物質(アンチトロンビン,ヘパリンコファクターⅡ)の影響を抑えるために過剰量が含まれているものの,試薬ごとにトロンビン濃度が異なることが知られている.過剰量のトロンビンが血漿中のフィブリノゲンをフィブリンに変換するために,本来は生体内で生じる少量のトロンビンが凝固第Ⅷ因子や凝固第Ⅴ因子といった凝固因子を活性化することによって起こるトロンビンポジティブフィードバックは検査原理上,関与しない.
本稿で最も伝えたいことは,フィブリノゲン測定試薬中には過剰なトロンビンが含まれていることから,トロンビン活性を阻害するような薬剤の影響に対しても比較的安定的に測定を行うことができるため,日常臨床でフィブリノゲン測定をするなかでトロンビン阻害薬によってフィブリノゲンが偽低値に測定されるという可能性をそれほど心配する必要はないということである.ただし,トロンビン活性を阻害するような薬剤が試薬のトロンビン活性を上回るほど血中に存在していた場合には,フィブリノゲンがフィブリンに変換されるまでの凝固時間が延長し,結果としてフィブリノゲンの偽低値を引き起こす可能性がある.日常の臨床で使用されるトロンビン活性を阻害する薬剤として,未分画ヘパリンや直接トロンビン阻害薬が挙げられる(表2).
参考文献
●高宮脩:血液検査の標準化と現状:フィブリノゲン.生物試料分析 32:371-379,2009
●辻肇:ヘパリン類の適正使用.日血栓止血会誌 19:187-190,2008
●藤森祐多,他:トロンビン力価の異なるフィブリノゲン測定試薬を用いた直接トロンビン阻害薬モニタリングの基礎的検討.日検血会誌 16:247-252,2015
●藤森祐多,他:Clauss法を用いたフィブリノゲン測定によるダビガトランモニタリングの可能性についての基礎的検討.臨病理 64:765-770,2016
掲載誌情報