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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査67巻10号

2023年10月発行

雑誌目次

増大号 肝疾患 臨床検査でどう迫る?

はじめに フリーアクセス

佐藤 雅哉

pp.1007

 肝疾患は,現代社会における深刻な健康問題になっています.肝臓は,代謝物の合成や解毒,胆汁の生成など,さまざまな生理学的プロセスを担っており,その機能が低下することで人体に深刻な影響を及ぼします.そのため,肝臓の状態を適切に評価し,早期に病態を把握することが重要です.本書「肝疾患 臨床検査でどう迫る?」は,特に肝臓の臨床検査に焦点を当て,最新の知見と実践的なアプローチを提供することを目的として企画致しました.

 肝疾患の診療にかかわる医療従事者にとって,正確で包括的な臨床検査情報の理解は,意思決定の基盤となる重要な要素ですが,肝臓の機能や構造の複雑さ,病状の多様性から,病体にかかわる臨床検査の解釈は医療従事者にとって難題となっています.

序章 総論

肝臓とは—肝臓の構造と働き

爲田 雅彦 , 中川 勇人

pp.1012-1017

はじめに

 肝臓は人体にとって重要な臓器であり,幅広い役割を担っている.

 本稿では,肝臓の構造と機能について解説し,その働きや肝疾患についての理解を深めることを目的としている.

—肝臓に起こる主な病気—急性肝炎

中山 伸朗

pp.1018-1023

はじめに

 感染症発生動向調査によると,A型肝炎は,4年に一度の流行年に相当するはずの2022年,前年より報告数が減少したが,E型肝炎は徐々に報告数が増加し,2021年にA型,B型を抜いて第1位となるなど,近年,急性肝炎の疫学には変化が生じている.

 本稿では,急性肝炎の定義,病態,疫学的動向から,重症化して急性肝不全に進展した場合の予後までを概説する.

—肝臓に起こる主な病気—慢性肝炎

平松 直樹

pp.1024-1030

慢性肝炎の疾患概念

 慢性肝炎は,肝臓の炎症が6カ月以上持続する疾患として定義されている.原因には,肝炎ウイルス(B型ならびにC型)の感染,自己免疫性,アルコール性,代謝性,薬物性などがある(表1).わが国では,かつてC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)感染が慢性肝炎の約7割,B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)感染が約1〜2割を占めていたが,近年,HCVは抗ウイルス療法によりほぼ100%排除され,C型肝炎の比率は減少し,非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)が増加傾向にある.

 一般に,肝炎が増悪しても自覚症状がないことが多く,検査をしなければ本人は気付かないことが多い.このため,厚生労働省では,保健所などにおける肝炎ウイルス検査の促進や医療費助成を含めた患者支援などを行い,積極的に肝炎対策を進めている.

—肝臓に起こる主な病気—肝硬変

淺岡 良成

pp.1032-1037

はじめに

 肝硬変は,慢性肝障害の終末像である.原因では,ウイルス性が最も多かったが,スクリーニングや治療の進歩により減少し,アルコール性や非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)によるものが増加している.

 原因に対する治療により肝病態の増悪を防ぐとともに,患者管理に関しては,肝癌や静脈瘤の定期的なサーベイランスを行い,肝硬変の症状である腹水や肝性脳症に対する治療によりQOL(quality of life)を維持することが重要である.

 そのためには,各種検査により炎症,線維化,発癌リスクなどを精確に把握し,状態に応じて治療,検査計画を立てる必要がある.

—肝臓に起こる主な病気—肝臓癌

岩永 光巨 , 叶川 直哉 , 小笠原 定久 , 加藤 直也

pp.1038-1043

はじめに

 肝臓癌,すなわち原発性肝癌は肝臓を原発として発生する癌である.原発性肝癌には肝細胞癌(hepatocellular carcinoma:HCC),肝内胆管癌,細胆管細胞癌,胆管囊胞腺癌,混合型肝癌,肝芽腫,未分化癌などが含まれる.「第22回全国原発性肝癌追跡調査報告(2012〜2013)」1)によると,原発性肝癌のうちHCCが全体の91.1%を占め,次いで肝内胆管癌が多く6.4%,HCCと肝内胆管癌の性質を併せもつ混合型肝癌が1.0%であり,その他の組織型の原発性肝癌は1%未満とごく少数であった.原発性肝癌は予後不良の癌であり,部位別でみると男性では世界で2番目に,女性でも6番目に死亡者数が多い癌である2).罹患者数,死亡者数ともに増加傾向で,特にアジアで多いことが知られている.

 本稿では原発性肝癌の大部分を占めるHCCに関して概説する.

1章 肝関連検査の見方

肝臓の炎症にかかわる検査—肝臓に起こる“火災”を調査する

山﨑 正晴

pp.1046-1051

はじめに—肝臓が“火災”を起こしている!

 肝臓に炎症が生じた場合,その原因を迅速に特定し,その程度を評価して,それに応じた適切な治療が求められる.炎症は読んで字のごとく“炎”の病である.

 本稿では,この炎症を肝臓の火災になぞらえ,臨床において日常的に行われている肝臓の炎症をみるという行為を見直して,そこにある難しさや問題点を明らかにし,それを見誤ることを回避する方策を考える.

肝臓の線維化にかかわる検査

豊田 秀徳

pp.1052-1057

はじめに

 ウイルス肝炎・脂肪性肝疾患に代表されるびまん性肝疾患において,肝線維化は肝硬変および肝細胞癌をはじめとする合併症の発生リスクと密接に関連しており,肝線維化の程度を評価することはびまん性肝疾患診療における最も重要な要素の1つである.従来,肝線維化の有無・程度の評価は肝生検で採取された肝組織の病理学的評価によりなされてきており,現在でも標準的な評価法とされている.

 一方で,肝生検は侵襲的な検査であり一般的に入院が必要なこと,検査に伴う出血のリスクがあること,コストなどの問題点があり,また採取する組織は肝のごく一部であることによるサンプリングエラーの問題,病理所見の観察者間でのvariabilityの問題が以前から指摘されてきた.これらの問題点を踏まえて,昨今ではさまざまな非侵襲的な肝線維化の評価法が提唱されている.非侵襲的な肝線維化の評価は,血液検査によるものと画像検査によるものに大別される.画像検査による肝線維化評価には腹部超音波診断機器を用いた超音波(ultrasound:US)エラストグラフィや磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging:MRI)を用いたMRエラストグラフィがあるが,いずれも診断機器を要し,ある程度術者の習熟が必要となる.

 一方,血液検査による肝線維化評価は,採血のみによる評価であり簡便である.現在さまざまな肝線維化の血清マーカーが提唱されているが,最適な血清線維化マーカーや肝線維化評価のカットオフ値はびまん性肝疾患の成因や目的により異なる場合が多いため,その使い分けには注意が必要となる.

 本稿では,肝臓の線維化にかかわる臨床検査について概説し,その特徴,使い分けについて論じたい.

肝癌の腫瘍マーカー

熊田 卓 , 腰山 裕一 , 安田 諭 , 豊田 秀徳

pp.1058-1063

はじめに

 肝細胞癌(hepatocellular carcinoma:HCC)の代表的腫瘍マーカーには,αフェトプロテイン(α-fetoprotein:AFP)1),AFP-L3分画(レンズマメレクチン結合性AFP)1,2)およびDCP〔des-γ-carboxy prothrombin.PIVKA-Ⅱ(protein induced by vitamin K absence or antagonist-Ⅱ)とも呼ばれるが本稿ではDCPに統一した〕3,4)の3種類がある.AFPとDCP両者の同時測定が保険制度上で認められており,HCCの補助診断として広く使用されている.AFP-L3分画の測定は現行保険上では地域によって解釈が異なるが,原則HCCの可能性が強く疑われるときにのみ算定される.「肝癌診療ガイドライン2021年版」5)においてはCQ2「肝細胞癌の診断に有用な腫瘍マーカーは何か?」において,「1.肝細胞癌の補助診断に有用な腫瘍マーカーとして,AFP,DCP(PIVKA-Ⅱ),AFP-L3分画を推奨する(強い推奨,エビデンスの強さA),2.小肝細胞癌の診断においては2種以上の腫瘍マーカーを測定することを推奨する(強い推奨,エビデンスの強さA)」と述べられている.

 腫瘍マーカーに求められるのは,①存在診断〔早期診断,進展度診断(Stage分類)〕,②質的診断(鑑別診断,悪性度診断),③治療効果判定・再発診断の3点である.これらを全て満たす腫瘍マーカーは現在のところ存在しない.3種類の腫瘍マーカーを効果的に組み合わせることによりその診断率は向上すると考えられ,本稿では筆者らのデータを示しながら解説する.

肝疾患にかかわる遺伝子多型

松浦 健太郎 , 田中 靖人

pp.1064-1070

はじめに

 ヒト遺伝子は個人差として約300個に1個,全ゲノムで約1,000万カ所の一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)が存在し,このSNPが個々の疾患の発症,薬剤反応性や副作用に大きく関与することがさまざまな疾患において明らかとなっている.近年,網羅的なSNPタイピング技術が飛躍的に進歩し,ゲノムワイド関連解析法(genome-wide association study:GWAS)を用いることにより,肝疾患領域においても治療,病態に関連する遺伝要因が明らかにされている.

 本稿では,主にGWASにより明らかとなった肝疾患に関連する遺伝子多型について解説する(表1).

2章 急性の肝疾患

急激な肝酵素の上昇がみられた際の鑑別と検査オーダーの流れ

内野 康志

pp.1072-1077

はじめに

 日常臨床のさまざまな状況において,スクリーニング検査として行われる血液検査には,多くの場合,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase:AST),アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase:ALT)などの肝機能検査が含まれる.そのため,消化器専門医,肝臓専門医以外の医師でも,肝機能検査値の異常に遭遇することは珍しくない.

 本稿では,特に急激な肝酵素の上昇がみられた際の鑑別と検査オーダーについて概説する.なお,AST,ALTなどは本来,肝臓の“機能”を反映しているものではない.しかし,これらも含めて肝機能検査と総称するのが一般的となっており,他に該当する適切な用語もないため,本稿でも肝機能検査という用語を用いることとする.

急な肝酵素上昇がみられた際の超音波検査の役割

小川 眞広

pp.1078-1084

はじめに

 患者を診察する際,採血検査の結果で急な肝酵素上昇を認めた場合には,異常の程度(現在の重症度の判定)と原因を究明し治療の内容が決定される.肝臓の働きには糖,タンパク,脂質,金属,薬剤などの代謝や胆汁の産生などがあり,まずこれらになんらかの障害が起こった場合を想定する.しかし,筋肉の挫滅によるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase:AST)の上昇や,血液の溶血時のビリルビンの上昇などの例もあり,採血結果の異常が全て肝臓の機能障害ではないことも理解する必要がある.そのため,複数の検査項目により総合的に評価を行うことが日常診療では求められる.

 AST,アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase:ALT)に代表される逸脱酵素は肝細胞が破壊されることにより上昇し,γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-glutamyl transpeptidase:γGTP)やアルカリフォスファターゼ(alkaline phosphatase:ALP)に代表される胆道系酵素は胆汁のうっ滞により上昇する.また,プロトロンビン時間やアルブミン値などのタンパク合成能は肝予備能を反映している.これらとほぼ同時に原因検索としてのウイルス学的な検査や免疫学的検査,さらには腫瘍マーカーなどの検査項目を追加し評価する.これらの採血結果は初診時に全て出そろうわけではなく.また,一時点での評価ではなく複数の時点の経過観察によりその重症度が把握できる症例もある.

 この診療体系のなかでの画像診断の役割は原因の究明と重症度判定であるが,受診からなるべく早い時期に行うことで不必要な検査を省略し,早く正しい診断に到達することが可能となり,医療経済的にも有用であると考えられる.通常施行される画像診断として,超音波検査,CT検査,MRI検査が挙げられる.肝臓は人体最大の実質臓器であり他臓器も含めた1視野での全体像の評価などには,CT検査,MRI検査が有効であるが,外来で対象者を選別することなく触診と同様の感覚で簡便に施行できるという点が超音波検査の長所である.また,超音波検査は非侵襲的な検査法のため,経過観察や治療効果判定など複数回の検査が可能な点においても優れている.しかし,一方でCT検査,MRI検査などと比較すると客観性に乏しく,有効に使用されていないことも推測されるが,近年装置の改良により超音波検査の客観性も飛躍的に上昇している.そこで,本稿では急な肝酵素上昇がみられた際に超音波検査を活用法できるように,観察の意義と描出のポイントについて解説する.

急性B型肝炎のウイルスマーカー

四柳 宏

pp.1086-1089

はじめに

 急性B型肝炎の際には(図1)に示すようなウイルスマーカーの変動がみられることが知られている.

 B型肝炎ウイルスに感染すると,HBs(hepatitis B surface)抗原が持続的に産生される.HBs抗原は感度の高いウイルスマーカーとして知られている.HBV DNA量の増加は,アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase:ALT)の上昇より早くみられることが多い.HBs抗体はB型肝炎の治癒後に陽性となる.

 本稿では,急性B型肝炎の経過とウイルスマーカーの変化について解説する.

B型肝炎ウイルスの再活性化とモニタリング

奥村 彰規 , 伊藤 清顕

pp.1090-1093

はじめに

 わが国においては,人口の約1%に当たる100万人程度がB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)のキャリアと推定されており1),HBV既往感染者〔HBs(hepatitis B surface)抗原陰性,かつHBc(hepatitis B core)抗体またはHBs抗体陽性〕は2割(2,600万人)程度存在するとされる.HBVキャリアでは“HBV DNAが10倍以上に上昇する”または“HBe(hepatitis B e)抗原が陽転化する”場合をHBV再活性化といい,既往感染者では“HBV DNAが検出感度以下より陽性化する”または“HBs抗原が陽転化する”場合をHBV再活性化という.特に,HBV既往感染者からの再活性化による肝炎はde novo B型肝炎と呼ばれる.HBV再活性化による肝炎は,B型急性肝炎に比べて急性肝不全になりやすく,また急性肝不全による死亡率が高いことも報告されている2).近年,化学療法や免疫抑制療法の進歩に伴ってこれらの治療法が多様化し使用機会も増加しているため,化学療法や免疫抑制療法が予定されている患者に対して,しっかりとガイドラインに従って対応をする必要がある.

 HBV再活性化の問題に対して,世界では米国肝臓病学会(American Association for the Study of Liver Diseases:AASLD),欧州肝臓学会(European Association for the Study of the Liver:EASL),アジア太平洋肝臓学会(Asian Pacific Association for the Study of the Liver:APASL)がガイドラインを制定している.いずれも,基本的には化学療法や免疫抑制療法を行う場合,HBVキャリアには核酸アナログ製剤の投与を,既往感染者には血中のHBV DNAをモニタリングするように推奨されている.わが国における対応は,日本肝臓学会による「B型肝炎治療ガイドライン」3)に定められており,2022年6月の第4版への改訂によりHBV再活性化についても改訂が行われた.

 本稿では,まずHBV再活性化を予防・判定するための関連マーカーについて触れ,その後HBV再活性化の機序と経過,化学療法・免疫抑制療法におけるスクリーニングおよびモニタリングについて解説する.

EBウイルス感染のウイルスマーカー

乾 あやの , 藤澤 知雄

pp.1094-1097

はじめに

 EBウイルスは肝細胞に特異的なレセプターは有さず,肝炎ウイルスとは異なるが,さまざまな肝機能障害を引き起こす.本稿では,伝染性単核球症(IM)と血球貪食性リンパ組織球症(HLH)を中心に解説する.

スコアリングによる自己免疫性肝炎の診断

大平 弘正

pp.1098-1101

はじめに

 自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis:AIH)は,何らかの機序によって自己の肝細胞に対する免疫学的寛容が破綻し,肝障害をきたす疾患である.通常は慢性肝炎として発見されることが多いが,急性肝炎ないしは重症肝炎,急性肝不全として発症する症例が存在する.急性肝炎として発症するAIHは,抗核抗体陽性や免疫グロブリンG(immunoglobulin G:IgG)高値といった典型的な所見を示さないこともあり,診断に苦慮することがある.

 本稿では,AIHの病態やスコアリングを用いたAIHの診断について概説する.

3章 慢性の肝疾患

病理検体を用いた肝線維化評価

山内 直子

pp.1104-1110

肝臓の病理検体

 病理検体として日常的に提出される肝臓の検体には,主として肝針生検検体と手術検体があり,びまん性肝疾患や肝結節性病変の病理診断が行われている.肝臓の病態の評価には肝針生検検体を用いた病理診断が非常に有用であるが,びまん性肝疾患の病変は肝内で不均一であることも多く,それに対して肝針生検で得られる組織は肝全体に比べて微小な一部分である.そのため,必ずしも全体像が反映されていない可能性,すなわちサンプリングエラー問題への考慮も必要である.小さな組織から患者にとって最大限の情報を得られるように適切な特殊染色も併用しつつ病理診断が行われている(図1).通常のヘマトキシリン-エオジン(hematoxylin-eosin:HE)染色だけでなく,鍍銀染色,EVG(Elastica van Gieson)染色,Azan-Mallory染色またはMasson trichrome染色なども施行して,肝臓の構造や線維化の評価を行っている.また,過ヨウ素酸シッフ(periodic acid Schiff:PAS)染色,ジアスターゼ処理後PAS(diastase PAS:dPAS)染色,鉄染色などの特殊染色も目的に応じて施行されている.

超音波エラストグラフィを用いた肝線維化診断

黒田 英克

pp.1111-1117

はじめに

 超音波エラストグラフィは,癌や動脈硬化といった組織硬化性病変を伴う疾患の画像診断として,1990年ころから研究開発が進められた.2003年に最初の臨床用装置がわが国で開発され,乳癌診断を中心にその有用性が実証された.2017年に肝硬変症例(肝硬変が疑われる患者を含む)を対象に保険適用となり,肝線維化診断や病期判定に広く利用されるようになった.

 本稿では,慢性肝疾患における超音波エラストグラフィの現況,各種超音波エラストグラフィの特徴と有用性について概説する.

臨床検査を用いた肝硬変患者における肝予備能の評価

久保 貴裕 , 赤羽 たけみ , 吉治 仁志

pp.1118-1121

はじめに

 肝硬変は,肝臓全体に再生結節が形成され,これを線維性隔壁が取り囲む病変と定義され,肝疾患の終末像である.肝機能がよく保たれ臨床症状がほとんどない代償性肝硬変と,肝性脳症,黄疸,腹水,浮腫,出血傾向など肝不全に起因する症状が出現する非代償性肝硬変に分類される.肝臓の重要な役割に,タンパク質などの合成と体内の老廃物の解毒がある.肝硬変では,肝細胞が慢性的かつ持続的に障害されることにより,肝実質細胞が減少し肝細胞機能不全となり,タンパク・アミノ酸・アンモニア代謝や糖・脂質代謝異常,ビリルビン・胆汁酸代謝の低下が起こる.その結果,アルブミン,総コレステロール,プロトロンビン時間(prothrombin time:PT),コリンエステラーゼなどが低下し,高アンモニア血症,高ビリルビン血症を呈するようになる.

 肝予備能は,これらの肝予備能を表す検査値や臨床所見を組み合わせて総合的に評価する.肝予備能の評価は,肝硬変患者の重症度の評価だけでなく予後予測にも有用である.

 本稿では肝予備能の評価法について解説する.

—発癌高リスク群の設定—B型慢性肝炎

保坂 哲也

pp.1122-1127

はじめに

 わが国におけるウイルス性肝癌のうち10〜15%がB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)由来のものである.一方B型慢性肝炎に対する抗ウイルス治療はインターフェロン製剤または核酸アナログ製剤を使用した治療が標準治療となっている.核酸アナログ製剤は2000年にラミブジン(lamivudine:LAM)が認可になったが,導入当初より耐性ウイルス出現頻度が高いことが問題となっていた.そこでLAM耐性出現症例に対して2004年にアデフォビル(adefovir:ADV)が認可となった.さらに2006年にはエンテカビル(entecavir:ETV)が認可となった.ETVは薬剤耐性出現頻度が非常に低く,抗ウイルス効果も良好なため,長期間にわたり核酸アナログ製剤の標準治療薬であった.2014年にはETV同様に耐性ウイルス出現頻度が極めてまれで,抗ウイルス効果の強力なテノホビル・ジソプロキシルフマル酸塩(tenofovir disoproxil:TDF)も認可され,薬剤耐性ウイルスに苦慮する場面はほとんどなくなった.2016年末にはTDFの全身曝露量を低下させながら,薬効成分を肝細胞へ効率よく移行するように改良されたTDFのプロドラッグであるテノホビル・アラフェナミドフマル酸塩(tenofovir alafenamide:TAF)が承認され,現在の標準治療薬として広く使用されている.

 これらの抗ウイルス療法によりHBV増殖が抑制され,それに伴い肝機能が改善されることは周知の事実であり,それにより肝発癌のリスクは低減されるが,必ずしもなくなるわけではない1).また肝発癌リスクの低減を達成するためには,抗ウイルス療法未治療症例の発癌リスク評価が重要である.

 そこで本稿ではB型慢性肝炎抗ウイルス療法未治療例の肝癌リスク評価と抗ウイルス治療後,特に核酸アナログ製剤投与例に対する肝癌リスク評価とを分けて,自験例や文献的考察を交えながら解説する.

—発癌高リスク群の設定—脂肪肝(NASH)

中塚 拓馬

pp.1128-1134

NAFLD/NASH

 肝臓は生理的に1%程度の脂質を含有するが,脂肪肝は“肝組織中の脂質(中性脂肪)が5%を超えた状態”と定義される.脂肪肝の成因はアルコール性と非アルコール性に大別され,日本肝臓学会の「NASH・NAFLDの診療ガイド2021」1)によれば,エタノール換算で60g/日以上の飲酒を伴う脂肪肝はアルコール性,ほとんど飲酒をしない場合(30g/日未満:男性,20g/日未満:女性)を非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)とされる.NAFLDはさらに,病態がすぐには進行しない非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver:NAFL)と,肝硬変や肝癌へと進行する可能性のある非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)に分類される(図1).

 従来,アルコール性でない脂肪肝は病態が進行しないと考えられていた.しかし1980年台にMayo Clinicの肝臓病理医であるLudwigら2)は脂肪肝炎と診断される症例のなかに非飲酒者が含まれることを指摘し,さらに1986年にSchaffnerら3)は飲酒歴がないにもかかわらずアルコール性肝障害に類似した肝組織像を示す病態としてNAFLDの概念を提唱した.その後1999年にMatteoniら4)が,過剰な飲酒歴のない脂肪肝患者を肝組織の病理学的所見に基づき以下の4つに分類した〔type 1:脂肪化のみ,type 2:脂肪化と炎症細胞浸潤,type 3:脂肪化と肝細胞風船様変性(ballooning),type 4:脂肪化と肝細胞風船様変性に加えMallory-Denk体あるいは線維化〕.ballooningは肝細胞の高度障害による形態変化で,特にNASHに特徴的な所見とされる.Matteoni分類のtype 3,4の症例,すなわちballooningや線維化を伴う脂肪肝は肝硬変や肝関連死の発生が高頻度であることが明らかとなっており,これらはNAFLDのなかでも進行性の病態のNASHと総称されるようになった.

—発癌高リスク群の設定—C型肝炎治癒(SVR)後

瀬崎 ひとみ

pp.1136-1141

はじめに

 C型慢性肝疾患は,インターフェロン(interferon:IFN)をベースとした治療を行っていた時代から,C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)が排除されるウイルス学的著効(sustained virological response:SVR)と肝発癌が抑制されるという多くの報告があり,国家公務員共済組合連合会虎の門病院(以下,当院)でも,C型慢性肝疾患の10年累積肝発癌率は,無治療群で12.0%,IFN治療無効群で15.0%であったのに対し,SVR群は1.5%と有意に肝発癌リスクが抑制されたと報告した1).2014年にわが国で初めて直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antivirals:DAAs)を用いたIFNフリー治療が認可されてから,それまでIFNによる治療は不耐容とされていた高齢者や肝線維化高度進行症例,さらには肝癌治療後の症例に対しても広く抗ウイルス治療が行えるようになり,100%に近い症例でSVRを得られるようになった.IFNフリーDAAs治療開始より5年以上が経過し,DAAs治療によるSVR達成も肝発癌抑制効果があるという報告も集積され,コンセンサスが得られてきている.一方で,IFN時代よりSVRが得られてからも肝癌を発症する症例は一定数みられ,SVR後5年以上の長期経過後に肝発癌を認める症例を経験する.このように,ウイルス排除後も長期にわたり肝発癌リスクは完全には消失せず,post-SVRの時代として,肝発癌リスク因子を同定し,肝発癌のサーベイランスをどのように行っていくかを検討することが重要となる.

 本稿では,SVR後の肝発癌リスク因子と肝発癌リスクの層別化について,自験例や文献的考察を交えて概説する.

C型肝炎ウイルス治療法の変遷—直接作用型抗ウイルス薬が変えたC型肝炎治療

芥田 憲夫

pp.1142-1146

はじめに

 C型慢性肝炎,代償性肝硬変の抗ウイルス療法は2014年11月から大きく変化した.それまでの治療は注射製剤で副作用も強いインターフェロン(interferon:IFN)を軸とした時代であったが,2014年からは内服薬で副作用の少ないIFNフリー治療の時代となった.具体的には,直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antiviral:DAA)の組み合わせだけで副作用も軽く,95%以上のC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)の持続陰性化(sustained virological response:SVR)が期待できる時代となった.さらに,2019年からは非代償性肝硬変まで使用可能な薬剤が製造販売承認され,HCVを100%持続陰性化できる時代も現実味を帯びてきている.

 本稿では,わが国におけるC型肝炎治療プロトコルの変遷を最新情報も交えて解説する.

肝腎症候群における臨床検査の役割

古殿 孝高 , 渋谷 祐子

pp.1147-1151

肝腎症候群(HRS)

 肝腎症候群(hepatorenal syndrome:HRS)は肝硬変で肝不全が不可逆的に進行した時期に発症する機能的腎不全である.肝硬変患者では腎機能が重要な予後予測因子で,HRSで急性腎障害(acute kidney injury:AKI)が出現すると肝疾患の予後が悪くなることが報告されており1),肝硬変に対する長期管理において腎機能を悪化させないようコントロールすることが重要である.

 HRSの病態は腎皮質血管攣縮による腎血流障害で起こる糸球体濾過量の低下である.この発症機序を図12)に示す.肝硬変でまず門脈圧亢進が生じ,一酸化窒素やその他の血管拡張物質の産生が亢進する.これにより末梢血管抵抗減弱・有効循環血液量低下が生じ,その結果,腎血流・還流圧が低下すると,レニン-アンギオテンシン-アルドステロン(renin-angiotensin-aldosterone:RAA)系,交感神経活性の亢進,ADHの上昇による腎血管収縮が起こり,腎血流障害が生じる.さらに,低アルブミン血症による循環血液量低下,生体への細菌叢の移動で引き起こされる活性酸素種やサイトカインの増加がHRSの成因と考えられている2).肝硬変である時期までは血管収縮作用と腎血流保持のバランスがとれ,糸球体濾過が保持されるが,血管収縮の影響が現れると腎血流が著明に減少し糸球体濾過圧が低下することで腎障害が生じると考えられており,感染やエンドトキシン血症が出現するとさらに腎障害が増悪する2)

肝性脳症における血中アンモニア検査の位置付け

片山 和宏

pp.1152-1155

はじめに

 肝性脳症は,急性肝不全や慢性肝疾患の終末像である肝硬変などの病態で起こりうる精神神経的な症状である.原因は,中枢神経での偽神経伝達物質作用やγ-アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid:GABA)レセプターの活性化など多岐にわたるが,なかでも窒素代謝の過程で産生されるアンモニアの関与は大きい.

肝移植周術期に行われる臨床検査

河地 茂行

pp.1156-1161

はじめに

 わが国の肝移植は,生体肝移植が年間350〜400例で,2021年8月24日に総数10,000例に到達した.脳死肝移植は年々増加傾向(2020年,2021年はコロナ禍で減少したが)にあり,2023年は年間100例を超える勢いで実施されている.

 肝移植の周術期にはあらゆる臨床検査が施行されており,その全てを詳述することは誌面の都合上できないが,本稿では,肝移植周術期の臨床検査の要点について解説する.

肝硬変患者における凝固・抗凝固・線溶異常

秦 浩一郎

pp.1162-1168

はじめに—閉鎖循環系・微小循環の維持と肝機能

 人体は,実に数十兆個にも及ぶ種々の細胞が組織を形成し,それらが有機的に集合して臓器として機能し,生体として統合されることで生命を維持している.これら全ての細胞・組織・臓器に酸素と栄養を運搬し,老廃物をクリアランスするために張り巡らされている血管網は,成人で約10万km,地球2周半にも達する.この膨大な血管床は“閉鎖循環系”を形成し,成人では容量にして約5Lの血液がその内腔を循環することで,各細胞の生命と機能を維持している.“出血”とは,この閉鎖循環系の一部が破綻して血管内を循環すべき血液が血管外に漏出する状態であり,直ちに局所的な血管攣縮と一次的な血小板凝集・血栓形成から凝固因子による二次止血までが速やかになされることで閉鎖循環系を維持しなければならない.一方で,よどみない微小循環の維持には,血栓の形成を予防し(抗凝固),血栓ができればこれを速やかに溶解(線溶)することで微小循環が維持されなければ,臓器機能が発揮されない.

 肝臓は,血管内皮細胞などで産生/発現/分泌される一部を除いて,ほとんどの凝固・抗凝固・線溶・抗線溶因子を産生する臓器である(表1)1).血小板凝集の核となるvon Willebrand因子(von Willebrand factor:vWF)重合体の特異的切断酵素ADAMTS13(a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs 13)も肝臓の星細胞で合成されること2),血小板の産生・放出を促すトロンボポエチン(thrombopoietin:TPO)も肝細胞で産生されること,さらに産生のみならず,活性化した凝固・抗凝固・線溶因子の分解をも担うことを考え合わせると,肝臓はまさに全身の凝固・抗凝固・線溶系,血小板系をつかさどる中心臓器である.血液の凝固(止血)と,相反する抗凝固・線溶がともに肝臓によって制御されているため,種々の病因による肝硬変から肝不全に陥ると,必然的に止血能とともに抗血栓・血栓溶解能も破綻することになり,閉鎖循環系・微小循環の維持が困難になる.

4章 肝腫瘍

肝細胞癌原因の変遷

建石 良介

pp.1170-1173

はじめに

 わが国における原発性肝癌の死亡数は,1970年代半ばに急速に増加し始め,2005年ころにピークを迎え,その後は緩やかに減少している(図1)1).罹患数についても同様であるが,そのピークは,2010年ころであり,死亡数の減少が5年ほど先行している.

 本稿では,わが国の肝細胞癌の原因をB型,C型,非B非C型に大別し,おのおのの動向について解説する.

肝癌の病理診断

上野 彰久 , 坂元 亨宇

pp.1174-1181

はじめに

 肝臓は人体最大の臓器であり,種々の腫瘍性病変が生じることが知られている.沈黙の臓器といわれるように,症状に乏しく超音波検査などの画像検査で初めて病変がみつかることも多い.

 本稿では,代表的な肝腫瘍として,肝原発悪性腫瘍の代表である肝細胞癌(hepatocellular carcinoma:HCC)と肝内胆管癌(intrahepatic cholangiocarcinoma:iCCA)とともに,肝悪性腫瘍で最も多い転移性肝癌,および肝細胞性の良性肝腫瘍である肝細胞腺腫(hepatocellular adenoma:HCA)について概説する.

肝腫瘍診断におけるソナゾイド®造影超音波の役割

西村 貴士 , 東浦 晶子 , 飯島 尋子

pp.1182-1189

はじめに

 造影超音波による肝腫瘍診断は,多血性か否か,washoutを認めるか,後血管相(以下,Kupffer相)の所見などを組み合わせて診断する.Bモードと同様,各腫瘍に特徴的な所見が得られれば確定診断が可能であり,CTやMRIの造影剤と比較して超音波造影剤であるソナゾイド®は卵アレルギー以外に使用を注意しなければならない対象はなく,腎機能障害でも投与量を減量することなく使用できる.

 本稿では,撮像法や個々の肝腫瘍に対する造影超音波検査の有用性について述べる.

機械学習による肝癌診断

佐藤 雅哉

pp.1190-1195

はじめに

 深層学習(ディープラーニング)の登場により,近年人工知能(artificial intelligence:AI)や機械学習(machine learning:ML)といった技術が注目を集めている.本技術が可能にした人間の知的活動のコンピューター上での再現により,従来は知的活動を行う人間のみに可能であると考えられていた車の運転などの活動がコンピューター上で実現され,知的活動を必要とする職業の一部が代替され始めている.MLの応用は,部分的にではあるが実臨床における医師の思考過程の模倣をも可能とし,医療分野においても近年さまざまな試みが行われている.

 本稿では,肝癌の診断に関するMLの応用について概説する.

進行肝細胞癌に対する薬物治療

上嶋 一臣

pp.1196-1201

はじめに

 肝細胞癌はC型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスなどによる慢性肝炎,肝硬変などの慢性肝疾患を母地として発生する癌として知られている.このため,これらのウイルス性肝疾患を有する患者を対象にきめ細やかなスクリーニングが行われ,早期発見,早期診断が可能となった.肝癌診療ガイドラインでは,C型慢性肝疾患患者,B型慢性肝疾患患者,および非ウイルス性の肝硬変患者が肝細胞癌の定期的スクリーニング対象とされ,3〜6カ月間隔での腹部超音波検査を主体とし,腫瘍マーカー測定を用いたスクリーニングを行うよう推奨されている1).しかしながら,近年の抗ウイルス療法の発達に伴って,B型肝炎ウイルス感染については,核酸アナログ製剤によるウイルス制御が可能となり,C型肝炎ウイルス感染については直接的抗ウイルス薬(direct acting antivirals:DAA)によりほぼ100%治癒可能な疾患となった.このことにより,徐々にウイルス発癌の割合は減少傾向となっている.

 一方で,非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)や非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)などを母地とする非B非C型肝細胞癌の割合が増加している.これらの患者はほとんどの場合,医療機関で発癌サーベイランスがなされておらず,症状出現あるいは検診などで指摘されて初めて診断されることが多い.実際,このような場合は診断時にはかなり巨大な癌であったり,広範囲に進展していたりすることが多く,肝細胞癌特有の治療方法であるラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation:RFA)や肝動脈化学塞栓療法(transcatheter arterial chemoembolization:TACE)などの局所療法が適応にならないこともしばしばである.巨大な肝細胞癌では可能であれば外科的切除が選択されるが,切除不能となれば全身薬物療法が選択されることになる.このような背景から肝細胞癌においては薬物療法の重要性が高まってきている.

造影超音波を用いた肝癌の治療効果予測

杉本 勝俊 , 和田 卓也 , 高橋 宏史 , 掛川 達矢 , 阿部 正和 , 吉益 悠 , 竹内 啓人 , 糸井 隆夫

pp.1202-1206

はじめに

 わが国において,肝癌の治療効果予測に最も汎用されるモダリティはその普及率とスループットを考慮するとCTであることは論をまたない.CTは肝臓とその周囲臓器も含め広い範囲をスキャンすることができ,治療効果予測だけではなく,有害事象の有無に関しても評価することが可能であり省略することは困難と思われる.しかし,(造影)超音波でしかわからない情報も多く,CTと(造影)超音波を両方行うのが理想である.また,ラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation:RFA)やマイクロ波焼灼療法(microwave ablation:MWA)に代表されるアブレーション治療において,超音波ガイド下で行った症例においては治療後全ての症例でCTを撮像する必要はなく,(造影)超音波による評価で十分に代用可能と思われる.

 本稿では,肝癌の治療効果判定(予測)における(造影)超音波の活用について概説する.

臨床検査を用いた肝癌の予後予測

平岡 淳

pp.1208-1211

はじめに

 肝細胞癌(hepatocellular carcinoma:HCC)の予後に腫瘍進行度と肝予備能が大きく関与する.肝予備能評価法としてChild-Pugh分類(以下,CP分類)や肝障害度(liver damage:LD)が用いられてきた.近年のウイルス性肝炎治療の進歩で肝予備能良好なHCCの割合が増加してきている.より詳細な肝予備能評価法としてアルブミンと総ビリルビンのみを使用したALBI(albumin-bilirubin)スコア/グレードや4段階評価のmALBI(modified ALBI)グレードの有用性が報告されている.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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