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雑誌詳細

文献概要

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あとがき

著者: 涌井昌俊

所属機関:

ページ範囲:P.1312 - P.1312

 世の中を席巻しているChatGPTをはじめ,人工知能(artificial intelligence:AI)の普及がもたらす社会への正および負の影響が大きく議論されています.臨床検査の世界も例外ではなく,研究面ではすでにAIの手法が利用されています.私の研究グループでも血液凝固検査に関するAI研究を開始しています.研究だけではなく検査実地にもAIが導入されるのはそう遠い未来ではないと感じている次第です.

 AI研究の話題で耳にする機械学習(machine learning)や深層学習(deep learning)は,多数のデータから計算手法を駆使して文字通りに学習して1つの答えを導く方法論です.ランダムフォレストをはじめ一部の機械学習は,標本数(N)が比較的少なくても対応でき,答えを導くまでのプロセスについて人間がある程度検証できるというメリットがあります.その反面,想定を無視するかのようなコペルニクス的転回を期待するのは難しいという限界があります.一方,深層学習は高次型機械学習であり,複数の学習プロセスによる多層的構造で学習を深化させる方法論です.その原理ゆえ膨大なNをそろえる必要があるのは大変ですが,想定外のインパクトが生まれる可能性があります.しかし,多層的構造ゆえ,答えが導かれるまでのプロセスは人間にとってはブラックボックスであり,何らかの方法で正誤を検証できなければ,そのまま社会実装につなげるのは危険です.血球形態検査の深層学習ならば人間による形態診断で,血液凝固検査の深層学習ならば各種凝固因子・インヒビターの測定値で答えの正誤を検証できますが,人間による検証の余地がない答えとどう向き合うべきなのかは極めて重要な課題です.

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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