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臨床検査67巻7号

2023年07月発行

雑誌目次

今月の特集 造血器・リンパ系腫瘍のWHO分類 第5版

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佐藤 尚武

pp.687

 2001年に出版された「造血器およびリンパ球系腫瘍のWHO分類 第3版」は,造血器・リンパ球系腫瘍分類のstandardとなり,広く普及しました.2008年に大改訂があり第4版が,さらに,2017年にその一部が改訂され,改訂第4版が出版されました.その後も遺伝子異常を中心に新知見は増え続け,第5版の刊行が決まり,2022年にはLeukemia誌にその概要が掲載されました.また,Webサイトではベータ版(有料)が公表されていますが,書籍はまだ出版されていません.

 臨床検査担当者・従事者,特に血液学検査の担当者にとって,造血器・リンパ球系腫瘍のWHO分類は避けて通ることのできないものになっています.第5版ではWHO分類が大きく変化していますが,そのポイントについて,Leukemia誌に掲載された内容を中心に解説していただきました.本特集を通じて,変化を続けるWHO分類をcatchupしましょう.

骨髄系腫瘍概論/クローン性造血/骨髄系腫瘍を好発する遺伝性腫瘍症候群

北中 明 , 通山 薫

pp.688-692

Point

●造血器腫瘍のWHO分類第5版が,Leukemia誌上の概要版とウェブサイトベータ版という2つの形で公表された.

●造血器腫瘍発症の前駆状態を反映するクローン性造血のカテゴリーが新設され,CHIPとCCUSの2病態が正式に定義された.

●“genetic tumor syndromes”というカテゴリーが設けられた.骨髄系腫瘍を好発する遺伝性腫瘍症候群としてFanconi貧血(FA)とRASopathyが代表的である.

骨髄増殖性腫瘍

枝廣 陽子

pp.693-697

Point

●慢性骨髄性白血病(CML)については,チロシンキナーゼ阻害薬による予後の改善に加えて,高リスク因子が重視された結果,移行期(AP)の診断基準は除外され,慢性期(CP),急性転化期(BP)の2つの分類に変更された.

●慢性好酸球性白血病(CEL)の診断基準については,好酸球増加の期間が6カ月から4週間に短縮され,疾患の呼称から非特定型が削除された.

●若年性骨髄単球性白血病(JMML)については,WHO分類改訂第4版では骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPN)に分類されていたが,第5版では骨髄増殖性腫瘍(MPN)に分類変更となった.

肥満細胞症/好酸球増加症と特定の遺伝子再構成を伴う骨髄性/リンパ性腫瘍

増田 亜希子

pp.698-702

Point

●肥満細胞症は,WHO分類第5版でも独立したカテゴリーとなっている.全身性肥満細胞症(SM)では,新規病型として骨髄肥満細胞症(BMM)が追加されるとともに,診断基準が一部変更された.

●WHO分類改訂第4版の“好酸球増加症と遺伝子再構成を伴う骨髄性/リンパ性腫瘍”は,WHO分類第5版では“好酸球増加症と特定の遺伝子再構成を伴う骨髄性/リンパ性腫瘍”に変更された.新規病型として,JAK2再構成,FLT3再構成,ETV6::ABL1融合遺伝子が追加された.

骨髄異形成腫瘍(旧 骨髄異形成症候群)

前田 智也 , 松田 晃

pp.703-708

Point

●骨髄異形成症候群の名称が骨髄異形成腫瘍(MDS)に変更された.

●MDS-5q,MDS-SF3B1,MDS-biTP53といった遺伝子異常に基づく病型が新設され,従来の異形成系統数による病型は廃止された.

●低形成MDS(MDS-h)が病型分類のなかに新設され,確立されたMDSの病型として扱われるようになった.

●MDSの芽球割合に基づく分類を明確にするため,低芽球性(with low blasts:-LB)と芽球増加を伴う(with increased blasts:-IB)という用語で分類する.

●芽球増加を伴うMDS(MDS-IB)は従来のMDS-EBと同様の芽球割合で細分化されるが,骨髄の線維化を認める場合は線維化を伴うMDS(MDS-f)に分類する.

●小児MDSが芽球割合によって再編され,小児不応性血球減少症(RCC)という暫定病型が廃止された.

骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍

桐戸 敬太

pp.710-715

Point

●骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPN)のカテゴリーから若年性骨髄単球性白血病(JMML)が除外された.

●慢性骨髄単球性白血病(CMML)の診断基準において必要とされる単球絶対数が1,000/μL以上から500/μLに引き下げられた.

●atypical CML,BCR-ABL1 negativeはMDS/MPN with neutrophiliaに名称変更された.

●MDS/MPN-RS-TはSF3B1変異の有無に基づいて2つの診断基準が設けられた.

急性骨髄性白血病/二次性骨髄性腫瘍

永沼 謙 , 木崎 昌弘

pp.716-721

Point

●急性骨髄性白血病(AML)は遺伝子異常で定義されるAMLと芽球の分化段階で定義されるAMLの2つの病型に大別されるようになった.

●AML非特定型(AML-NOS)という名称は用いられなくなった.

●骨髄異形成に関連した変化を有するAML(AML-MRC)は骨髄異形成に関連したAML(AML-MR)へと名称変更され,診断基準の一部が変更された.

●二次性骨髄性腫瘍では,WHO分類改訂第4版における治療関連骨髄性腫瘍(t-MNs)は細胞障害性治療歴のある骨髄性腫瘍(MN-pCT)と名称変更され,PARP1阻害薬がMN-pCTの原因薬剤の1つとして加えられるようになった.

混合系統型ないし分化系統不明瞭な急性白血病/組織球/樹状細胞腫瘍

稲葉 亨

pp.722-726

Point

●遺伝子異常により診断される分化系統不明瞭な急性白血病(ALAL)として,新たに2つの病型〔ZNF384再構成を伴う混合系統型急性白血病(MPAL),BCL11B再構成を伴うALAL〕が追加された.

●MPALの免疫表現型を判定する際には,該当する抗原の発現強度や発現様式にも留意する.

●組織球/樹状細胞腫瘍の範疇には形質細胞様樹状細胞(pDC)由来のクローン性疾患が含まれ,また,Rosai-Dorfman病,未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性組織球症が組織球性腫瘍として新たに追加された.一方,濾胞樹状細胞肉腫と線維芽細胞様細網細胞腫瘍は別の範疇に含まれることになった.

●Langerhans細胞(LC)腫瘍や組織球腫瘍ではMAPK経路の遺伝子変異を認めることが多く,分子標的薬の対象となる.

リンパ系腫瘍概論

伊豆津 宏二

pp.728-734

Point

●WHO分類第5版のリンパ腫などリンパ系腫瘍の分類の基本的な構築や疾患名は改訂第4版から大きな変化はない.

●改訂第4版と比べて診断名の階層構造がより明確になった.

●リンパ腫との鑑別を要する,非腫瘍性リンパ球増殖症が新たに記載された.

●改訂第4版までリンパ系腫瘍の分類の作成を主導したILSGのメンバーを中心としてICCというもう1つの分類が同時期に提唱された.

B細胞優位の腫瘍様病変/Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫

高見 昭良

pp.735-737

Point

●B細胞優位の腫瘍様病変が新たに加えられた.

●Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫(B-ALL)診断の基本は依然形態観察とフローサイトメトリー解析である.

●B-ALL with TCF3::HLF fusion,B-ALL with BCR::ABL1-like features,B-ALL with ETV6::RUNX1-like features,B-ALL with other defined genetic abnormalitiesが追加された.

●現行の保険診療ではB-ALLの細分類は困難である.

成熟B細胞腫瘍1—前腫瘍性および腫瘍性小リンパ球増殖症/脾B細胞リンパ腫および白血病/リンパ形質細胞性リンパ腫/辺縁帯リンパ腫/濾胞性リンパ腫/マントル細胞リンパ腫

福原 規子 , 一迫 玲

pp.738-743

Point

●B細胞性前リンパ球性白血病(B-PLL)は,独立した疾患単位ではなく,複数の疾患単位の集合体に再分類された.

●脾B細胞リンパ腫および白血病では,新たにsplenic B-cell lymphoma/leukaemia with prominent nucleoliが独立した疾患単位となる.

●辺縁帯リンパ腫(MZL)では,解剖学的部位によって遺伝子異常が異なり,皮膚原発MZLが独立した疾患単位となる.

●濾胞性リンパ腫(FL)では,grading分類がオプションとなり,新たにunclassified follicular lymphomaが独立した疾患単位となる.

成熟B細胞腫瘍2—低悪性度B細胞リンパ腫の組織学的形質転換/大細胞型Bリンパ腫/バーキットリンパ腫/KSHV/HHV8関連B細胞増殖症およびリンパ腫

松下 弘道

pp.744-750

Point

●diffuse large B-cell lymphoma, not otherwise specified(DLBCL, NOS)では,引き続きgerminal center B-cell-like(GCB) subtype/activated B-cell-like(ABC) subtypeの病型分類を推奨しており,実務的には簡便性からHansアルゴリズムの使用を容認している.

●いわゆる“double-hit lymphoma”に相当するdiffuse large B-cell lymphoma/high-grade B-cell lymphoma with MYC and BCL2 rearrangements(DLBCL/HGBL-MYC/BCL2)は,MYCおよびBCL2再構成を有する場合とされ,胚中心Bリンパ球の遺伝子発現パターンを示す細胞集団に限定された.

●primary large B-cell lymphomas of immune-privileged sitesには,血液脳関門,血液網膜関門および血液精巣関門によって免疫学的聖域(immune-privileged sites)となった中枢神経系(CNS),網膜硝子体,精巣に発症する進行性B細胞性リンパ腫が含まれる.

●fluid overload-associated large B-cell lymphomaは慢性心不全,腎不全,蛋白漏出性胃腸症,肝硬変などの体液過負荷(fluid overload)を生じる病態に合併するリンパ腫で,体腔,特に胸腔に発症する.高齢者に多く,予後は良好である.

成熟B細胞腫瘍3—免疫不全症および免疫調節障害関連リンパ増殖症とリンパ腫/ホジキンリンパ腫/形質細胞腫瘍および異常蛋白を伴う他の疾患

市川 聡

pp.751-756

Point

●免疫不全の概念の拡大とともに,免疫不全に関連して発症するリンパ増殖性疾患(LPD)は“免疫不全症および免疫調節障害関連リンパ増殖症(IDD関連LPD)”とカテゴリー分類され,病理診断名に原因ウイルスや臨床状況が付記されたかたちで記述される横断的な疾患概念となった.

●古典的Hodgkinリンパ腫(CHL)の分類には基本的に変更はない.結節性リンパ球優位型Hodgkinリンパ腫(NLPHL)は暫定的にHodgkinリンパ腫のくくりで分類されているが,将来的に変更がありうる.

●形質細胞腫瘍のカテゴリーでは,M蛋白沈着によって特徴付けられる病態の記述が拡大され,また,新たな疾患概念についての記述も追加された.

T/NK細胞のリンパ増殖性疾患とリンパ腫/T細胞優位の腫瘍様病変/前駆T細胞腫瘍

東田 修二

pp.757-759

Point

●WHO分類第5版では“T/NK細胞の増殖性疾患とリンパ腫”が再編成された.

●“T細胞優位の腫瘍様病変”という疾患群が新たに加わり,ここにインドレントTリンパ芽球増殖症(ITLP),菊池・藤本病(KFD),自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)の3疾患が含まれる.

●NKリンパ芽球性白血病/リンパ腫は明確な診断基準がないため,第5版では疾患単位としては削除された.

T/NK細胞腫瘍1—成熟T/NK細胞白血病/小児EBV陽性T/NK細胞増殖症およびリンパ腫

鈴宮 淳司

pp.760-764

Point

●成熟T/NK細胞白血病には,T細胞前リンパ球性白血病(T-PLL),T細胞大顆粒リンパ球性白血病(T-LGLL),NK細胞大顆粒リンパ球白血病(NK-LGLL),成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL),Sézary症候群(SS),急速進行性NK細胞白血病(ANKL)がある.小児EBウイルス(EBV)陽性T/NK細胞増殖症およびリンパ腫は,慢性活動性EBV疾患(CAEBVD)と小児全身性EBV陽性T細胞リンパ腫(SEBVTCL)の2つに分けられる.

●T-PLLはTCL1AまたはMTCP1再構成やTCL1A蛋白発現,T-LGLLはSTAT3変異,NK-LGLLはSTAT3やTET2変異が診断基準として加えられた.

●ATLLには免疫回避に関与する遺伝子変化が,ANKLにはJAK/STATやRAS/MAPK経路の遺伝子,エピジェネティック修飾因子や免疫チェックポイント分子の変異が病因や病態に関与することが明らかになった.

●CAEBVDはTまたはNK細胞の両者に由来する可能性がある.CAEBVDには限局性でインドレントな重症蚊刺アレルギーと古典型種痘様水疱症リンパ増殖異常症(HV-LPD),システミックな病態として全身性には全身性HV-LPDや全身性CAEBVDがある.

T/NK細胞腫瘍2—原発性皮膚T細胞増殖症およびリンパ腫/腸管T/NK細胞増殖症およびリンパ腫/肝脾T細胞リンパ腫/リンパ組織の間質由来腫瘍/genetic preposition syndrome(遺伝的高発癌症候群)

大島 孝一

pp.765-771

Point

●悪性リンパ腫の診断・分類には形態,臨床像,免疫染色,染色体,遺伝子解析による総合的な診断が必要である.

●臨床病態に密接に関連した病因(ウイルス,染色体,遺伝子,年齢,病変部位など)の重要性が求められており,形態のみでは診断は困難である.

●発育様式が年単位か,月単位か,週単位かを判断する臨床態度が悪性リンパ腫の診断・分類に不可欠である.

●悪性リンパ腫の分類は,予後を予測し,治療戦略を立てることにおいて分類は重要である.上記の内容を十分に理解したうえで分類を行うべきである.

T/NK細胞腫瘍3—未分化大細胞リンパ腫/節性T濾胞ヘルパー細胞リンパ腫/その他の末梢性T/NK細胞リンパ腫

井上 典仁 , 津山 直子 , 竹内 賢吾

pp.772-779

Point

●未分化大細胞リンパ腫(ALCL)ファミリーには,未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性ALCL,ALK陰性ALCL,乳房インプラント関連ALCL(BIA-ALCL)の3つのエンティティが含まれる.原発性皮膚ALCLは,原発性皮膚T細胞リンパ増殖症およびリンパ腫のファミリーに属している.

●WHO分類改訂第4版において“血管免疫芽球性T細胞リンパ腫および他のT濾胞ヘルパー細胞起源性リンパ腫”であったリンパ腫は,ファミリーの名称と各エンティティの名称が変更された.それぞれの類似点が多いことから,“節性T濾胞ヘルパー細胞リンパ腫(nTFHLs)”が共通用語として採用されている.

●末梢性T細胞性リンパ腫(PTCL)には,TBX21およびGATA3の生物学的バリアントが認められるが,サブタイプとするには現時点でのデータが不十分とされている.

●節外性NK/T細胞性リンパ腫は,鼻以外の全身の節外に出現することが周知となったため,“鼻型”という言葉は削除された.また,EBV陽性NK/T細胞リンパ腫のエンティティとして,節性TおよびNK細胞性リンパ腫が新たに定義された.

今月の!検査室への質問に答えます・6

ダニに刺されて皮疹が出ています.何を考えて,どのような検査を出せばよいですか?

山藤 栄一郎

pp.780-783

はじめに

 “ダニに刺されて皮疹が出る病気”は,感染症法の第4類に指定されるつつが虫病,日本紅斑熱,ライム病,重症熱性血小板減少症候群などが該当する.届け出数で圧倒的に多いのがリケッチア症のつつが虫病や日本紅斑熱であり,2022年はどちらも500例近い届け出があった.そのため,ダニに刺されて皮疹が出て受診した場合,つつが虫病や日本紅斑熱の患者に違いないと思われるかもしれない.しかし,これは臨床現場での落とし穴になりうる.なぜならば,ダニに刺されて皮疹が出たという病歴でリケッチア症の患者が受診することは,かなりまれだからである.リケッチア症患者のほとんどはダニに刺されたことを自覚しておらず,皮疹にも気付いていない患者が多い.

 実際に上記の病歴で受診するのは,地域にもよるが,マダニに刺症されて発症するライム病とダニ紅斑病(tick-associated rash illness:TARI)の可能性が高い.主に,ライム病はシュルツェマダニ(Ixodes persulcatus)によって,TARIはタカサゴキララマダニ(Amblyomma testudinarium)によって発症する.マダニの活動時期は春先から冬にかけてであるが,日本国内ではシュルツェマダニ,ヤマトマダニ(Ixodes ovatus),タカサゴキララマダニ,フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)などによる刺症例が多い.

 マダニに刺されて皮疹が出て受診した患者の皮疹を図1に示す.局所的な遊走性紅斑で環状紅斑(図1a),あるいは比較的均質な紅斑(図1b)を呈し,どちらも紅斑の直径が50mm以上の場合がほとんどである.ダニ刺症後にこのような紅斑をみた場合,国内ではライム病かTARIの可能性が高いということになる.

AI・ビッグデータ時代の臨床検査のための情報科学・3

検査の標準化に必要な統計学

荒木 秀夫 , 堀田 多恵子

pp.784-793

Point

●臨床検査の標準化には,トレーサビリティ連鎖と校正階層の理解が重要である.

●認証標準物質が存在する項目では,不確かさの解析や見積もりを実施する手順を理解することが重要である.

●標準化された臨床検査値には,ものさしとして適切な基準範囲が必要である.

医療紛争の事例から学ぶ・1【新連載】

採血

蒔田 覚

pp.794-796

はじめに

 令和3(2021)年5月の「臨床検査技師等に関する法律」の改正によって臨床検査技師の業務範囲が拡大された.

 現在,臨床検査技師は,“診療の補助”として①採血を行うこと,②検体採取を行うこと,③厚生労働省令で定める生理学的検査を行うこと,④これらに関連する行為として厚生労働省令で定めるものを行うことができる.

 かつて臨床検査技師業務の中心であった“検体検査”と異なり,上記の行為は患者の身体への侵襲を伴う医行為(保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為)である.医師の働き方改革を実現するためのタスク・シフト/シェアの下で,臨床検査技師には,“検体検査”業務だけでなく,“診療の補助”業務についてもいっそうの活躍が期待されている.その結果,患者やその家族と接触する機会は格段に増えることが予想される.

 “温故知新”,つまりこれまでの医療紛争事例を学ぶことは,今後の臨床検査技師の業務を行ううえでの羅針盤になるであろう.臨床検査技師は医療機関や衛生検査所など(以下,医療機関等)に雇用されており,訴訟当事者(被告)となるのは,臨床検査技師を雇用する医療機関等であることが多い.もっとも,不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償請求の第一義的責任は臨床検査技師にあり,採血による神経損傷事例に関し,過去には医療機関と連帯して臨床検査技師に3,800万円を超える損害賠償を認めた裁判例も存在する(福岡地方裁判所小倉支部平成14年7月9日判決1)).

 連載企画の第1回となる本稿では,臨床検査技師による採血行為が問題となった近年の裁判例〔(原審)東京地方裁判所平成28年1月13日判決2)/(控訴審)東京高等裁判所平成28年6月21日判決3)〕を紹介する(請求額約1,800万円/請求棄却・控訴棄却).

書評 フリーアクセス

前川 真人

pp.797

書評 フリーアクセス

吉橋 昭夫

pp.798

あとがき フリーアクセス

関谷 紀貴

pp.802

 暑い夏がやって来ます.恒例の夏休みを前に,皆さまはどのような計画を立てていらっしゃるでしょうか.私は2020年からの3年間,夏が訪れるたびに繰り返された感染の波に翻弄され,同じ波ならHawaiiに行ってNorth Shoreの大波に飲まれたい……とわけのわからない妄想で何とか気分をまぎらわせ,やっと今年の夏を迎えられたという心境です.

 今から17年前の夏,私は地域医療研修の一環で西表島の西部診療所に2週間ほど滞在する機会をいただきました.西表島といえば,天然記念物であるイリオモテヤマネコ,カンムリワシ,セマルハコガメなどが有名です.滞在中は離島医療の一端を勉強させていただいただけではなく,島の約90%が亜熱帯型のジャングルに覆われ,東洋のガラパゴスともいわれる豊かな自然を存分に味わうこともできました.特に印象的な経験だったのは,八重山地方で旧盆の行事として行われる“アンガマ”に参加する機会をいただいたことです.地域ごとに多少の差があるようですが,深いしわが刻まれたおじいさんとおばあさんのお面を着けたアンガマとその一行が招待を受けた家々を訪問し,三線や太鼓などを奏でながら仏壇を拝み,舞い踊り,旧盆に帰ってきたご先祖の霊を慰めます.明るい雰囲気ながら死者を弔いつつ想いをはせる時間として,家族一同が心から大切にされているようでした.最後に美しく静かな砂浜で手を合わせて祈る時間がありましたが,現世と幽世が交わるような不思議な感覚に包まれたことを今でも覚えています.島は異なりますが,石垣島のアンガマについて水木しげるさんが次のような文章を書かれているのですが,その意味が身に染みた出来事でした.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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