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文献詳細

雑誌文献

臨床検査68巻4号

2024年04月発行

文献概要

増大号 AKI・CKDの診断・治療に臨床検査を活かせ 4章 腎疾患を知る—臨床検査ができること 臨床検査で迫る腎疾患

糖尿病性腎症・腎臓病と腎硬化症

著者: 田蒔昌憲1 脇野修1

所属機関: 1徳島大学病院腎臓内科

ページ範囲:P.524 - P.527

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糖尿病性腎症(DN)の診断と病期分類

 糖尿病は慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)や末期腎不全の重要な原因であり,糖尿病の腎合併症である糖尿病性腎症(diabetic nephropathy:DN)はわが国の新規透析導入原疾患のうち最多である1).DNは,もともと糖尿病性糸球体硬化症という組織学的特徴を有する腎疾患に対する病名であった2).しかし2型糖尿病患者数は多いため,腎症を疑う全ての症例に腎生検を施行することは現実的に困難である.したがって,典型的な臨床経過と症候〔糖尿病歴,微量アルブミン尿〜顕性アルブミン尿を経て糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)低下,高度血尿なし,糖尿病網膜症・糖尿病神経障害の合併など〕を伴い,臨床的にほかの腎疾患が強く疑われない場合にDNと診断されるようになった2)

 上記の通り,典型的なDNの臨床経過としては尿タンパクの悪化が先行し,次第に腎機能障害が進行し,最終的に末期腎不全へ至る.したがって,わが国におけるDN病期分類に関しては,旧厚生省糖尿病調査研究班で作成され糖尿病性腎症合同委員会で改訂された分類が広く用いられていた3).しかし,CKDの概念が提唱されCKDステージ分類が登場すると,従来のDN病期分類では主にアルブミン尿で分類され,CKDステージ分類では推算糸球体濾過量(estimated GFR:eGFR)で分類することから,両者に乖離を生じる症例が存在することが明らかとなった.そこで,2014年にDN病期分類が改訂され3),その後2023年に改訂されて今日に至る(表1)4).特に,尿アルブミン測定が重要であるが,本検査の保険適用として,糖尿病または糖尿病性早期腎症患者であって微量アルブミン尿を疑うもの(DN第1期または第2期のものに限る)に対して行った場合,3カ月に1回に限り算定できることに注意が必要である.

参考文献

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2)日本腎臓学会(編):エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018,東京医学社,2018
3)糖尿病性腎症合同委員会:糖尿病性腎症病期分類2014の策定(糖尿病性腎症病期分類改訂)について.日腎会誌 56:547-552,2014
4)糖尿病性腎症合同委員会・糖尿病性腎症病期分類改訂ワーキンググループ:糖尿病性腎症病期分類2023の策定.日腎会誌 65:847-856,2023
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8)菅原真衣,他:Diabetic nephropathyとdiabetic kidney diseaseの今後 世界の潮流と日本人で明らかにすべきポイント.内分泌糖尿代謝内科 45:249-252,2017
9)日本腎臓学会:DKD(Diabetic Kidney disease)の訳語について(https://jsn.or.jp/medic/newstopics/formember/dkddiabetic-kidney-disease.php)(最終アクセス:2024年1月9日)
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11)和田隆志(研究代表者):厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患等克服研究事業〔難治性疾患等実用化研究事業(腎疾患実用化研究事業)〕糖尿病性腎症ならびに腎硬化症の診療水準向上と重症化防止にむけた調査・研究 平成24-26年度 総括・分担研究報告書,2015
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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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