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文献詳細

雑誌文献

臨床検査68巻4号

2024年04月発行

文献概要

増大号 AKI・CKDの診断・治療に臨床検査を活かせ 4章 腎疾患を知る—臨床検査ができること 腎疾患の話題

腎疾患における治療薬物モニタリング(TDM)

著者: 平田純生1

所属機関: 1I&H株式会社[阪神調剤グループ]学術研修部

ページ範囲:P.554 - P.559

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腎疾患と治療薬物モニタリング(TDM)

■TDMの現状

 治療薬物モニタリング(therapeutic drug monitoring:TDM)とは,個々の患者の薬物血中濃度を測定し,薬効および副作用を的確に把握したうえで,それぞれの患者に個別化した薬物投与を行うことである.わが国で薬物血中濃度の測定が保険で算定可能な薬物(特定薬剤治療管理料の算定できる薬物),すなわちTDMの対象薬には,抗菌薬,免疫抑制薬,抗癌薬,抗不整脈薬,抗てんかん薬などいわゆるハイリスク薬が多く含まれており,60数種類に上る.ただし実際に臨床現場で測定され,薬剤師が薬物動態学的評価を加えてフィードバックしている薬物の多くが腎排泄性のバンコマイシンである.バンコマイシンは投与量が多すぎると薬剤性腎障害が起こりやすく,逆に投与量が少なすぎると効果が得られず,血中濃度が低い状態(無効域)が続くとバンコマイシン耐性腸球菌などの耐性菌を出現させる恐れがあるため,多くの病院でTDMが実施されている.

 そして,高額医療である臓器移植に伴って特別に他のTDM対象薬の10倍近くの高額な保険点数が設定されている免疫抑制薬の主役であるカルシニューリン阻害薬のTDMは,特に移植直後に頻繁に行われているが,臓器移植の可能な大学病院またはそれに準ずる高度医療機関のみで実施されている.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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