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文献詳細

雑誌文献

臨床検査68巻7号

2024年07月発行

文献概要

今月の!検査室への質問に答えます・16

FDPとDダイマーの関係性について教えてください

著者: 小宮山豊1 松田将門2

所属機関: 1北陸大学医療保健学部 2福島県立医科大学保健科学部臨床検査学科

ページ範囲:P.891 - P.895

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はじめに

 フィブリノゲン/フィブリン分解産物(fibrinogen/fibrin degradation products:FDP)とDダイマーの関係性を理解するには,凝固反応の最終段階を理解する必要がある.凝固反応の最終産物であるフィブリンの生成過程は細かくみると2段階あり,まず凝固活性化により生じたトロンビンによりフィブリノゲンがフィブリンモノマーに変換され,次いで凝固第XIII因子により架橋化され,血栓として安定な架橋化フィブリンとなる.FDPはフィブリノゲンとフィブリンがプラスミンなどにより分解され生じた分解産物であり,Dダイマーは架橋化フィブリンが主にプラスミンで分解された分解産物である1).つまり,FDPは血栓形成に伴うフィブリンの分解反応のみならず,血栓の“材料”であるフィブリノゲンの分解反応も含む線溶系の異常亢進状態を反映するため,播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation:DIC)の重要な診断指標となる.一方,Dダイマーは血栓形成後すなわち架橋化フィブリンが線溶反応により分解したもののみに由来するため,血栓形成を反映するマーカーであり,血栓症の重要な診断指標となる(図1).

 FDPとDダイマーの関係を,それらの材料であるフィブリノゲンやフィブリンと分解酵素であるプラスミンとの関係で示したものが図2である.DダイマーはFDPの一部であり,FDPのなかでD-D分画を含むフラグメントの総称である.FDPやDダイマーはさまざまなフラグメントの混合物であり,また実際には,これらは血中で重合体を形成し高分子化しているためより複雑である.DダイマーはDD/Eを基本構造とし,DダイマーのWestern blotやゲル濾過でみられるように,この構造を1〜5個含んだ不均質な集合体として取り扱われ,これらを抗原抗体反応で定量した結果が日常の検査値として用いられている1)

 本稿では,FDPとDダイマーの関係について,臨床からの問い合わせを想定し,それに返答・解説する形で,概説する.

参考文献

1)窓岩清治:線溶系マーカー.日血栓止血会誌 34:317-324,2023
2)丸藤哲,池田寿昭,石倉宏恭,他:急性期DIC診断基準—第二次多施設共同前向き試験結果報告.日救急医会誌 18:237-272,2007
3)朝倉英策,高橋芳右,内山俊正,他:日本血栓止血学会 DIC診断基準 2017年版.日血栓止血会誌 28:369-391,2017
4)櫻井錠治:臨床検査試薬を用いて得た測定値と実質質量濃度との関係について Dダイマー値>FDP値は変だろうか.生物試料分析 40:261-270,2017
5)高田章美:FDPやDダイマーの上昇 採血不良.臨検 66:1244-1247,2022
6)徳竹孝好:症例提示⑤ FDP・Dダイマーの異常高値 胸水・腹水由来や非特異反応など.検と技 51:1055-1058,2023
7)小宮山豊:患者の病態と一致しないFDP,あるいはD-dimerの異常高値は,どうして起こるのですか?.臨検 57:1252-1253,2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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