感染症診療において,病原微生物の同定と疾患の正確な診断が重要であることは言うまでもありません.しかし「言うは易く行うは難し」で,現場では日々悩ましい状況に遭遇します.想定している疾患を診断するために海外のガイドラインやUpToDate®などで診断や菌同定の決定打となる検査の種類にたどり着くことはできても,いざ検査をしようとすると日本では施行できない検査であったり,微妙に検査の種類が異なっていたり,検査アクセスが限定されていたり,どこに相談したらよいか分からなかったり……ということがしばしばあり,状況をより複雑にしています.特に,比較的出会う機会が少ない感染症ではその傾向が顕著にあり,われわれ感染症医や臨床検査技師への相談のみでは解決できない場合があります.
今回の増大号では感染症医として実際に困った経験に基づいて,「日本で診断を行うときにどのように検査を進めたらよいか」「陽性となった検査結果にどのように対応したらよいか」というテーマに焦点を合わせて,それぞれの臨床疑問に対して各分野のエキスパートの先生方に簡潔に答えていただく形で執筆をお願いしました.一般的な検査の解釈方法から希少疾患の診断・検査,検査の相談先まで日本で働く医師・臨床検査技師にとって痒いところに手の届く内容に仕上がっており,まさに困ったときに『サッと読めてパッとわかる! 感染症診断メモ。』として調べることもできる,各施設にあると助かる1冊となることを願っています.