はじめに
ギムザ染色標本によって代表される古典的血液形態学が,完壁ともいうべき体系を完成するにつれ,その壁を突破して,新しい前進への努力が行なわれた。その一つに組織・細胞の化学的構成分を特異的に呈色させ,顕微鏡下に可視的としようとする,形態学と生化学との組合せともいうべき組織化学あるいは細胞化学と呼ばれる研究方法がある。
アルカリホスファターゼ(以下APと略記する)はオキシダーゼ系に関する研究以外見るべきもののなかった血球の化学的構成分の組織化学的研究の大発展の端緒となり,かつ今日なお最も広く研究の対象とされ,興味ある所見の得られている物質である。