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文献詳細

雑誌文献

精神医学1巻10号

1959年10月発行

研究と報告

2-Dimethylaminoethanolの正常人の心的機能に対する効果

著者: 高橋良1 仮屋哲彦1 矢崎妙子1

所属機関: 1東京医科歯科大学神経精神医学教室

ページ範囲:P.729 - P.736

文献概要

Ⅰ.緒論
 中枢神経興奮剤として以前から知られているamphetamineのほかに,最近はpipradrol,ritalin,cafilonなどの新薬があいついで登場し,これらはcentral stimulantとして,精神科領域における薬物療法に一つの寄与をなしてきた。すなわちこれらは主として抑うつ気分や活動性低下を示す患者群やナルコレプシーなどに,対症療法として有効な場合があることが報告されている。しかし患者でないわれわれ正常人でも,とくに原因もなく軽く気分の沈む日や活動意欲のわかないこともある。これはむろん正常範囲の感情・意欲の波であるが,この状態はとくに多忙な仕事におわれている人々には困ることである。このような場合,正常人にこれらのstimulantが用いられれば大いに効用があることは当然であろう。ところが,これらはいずれも服用後まもなく,中枢の刺激効果をもたらす反面,その後に脱力感や不眠を残すことがまれでなく,また内的焦躁感や服用中止後のafter depressionもよくみられる。とくにamphetamine類には習慣性がつよく,長期間服用を続ければついには覚醒剤中毒として戦後一大社会問題となつた精神病状態をきたす危険性を含んでいる。pipradrol,ritalinなどの新薬もamphetamineとは薬理作用がやや異なるとはいえ,その作用の性質から,習慣作用,嗜癖傾向の問題は今後に残されているので,その取扱いに関しては慎重でなければならないというのがおおかたの意見である。
 ここで報告する2-dimethylaminoethanol(DM-AE)とは,もともと天然の食料,とくに魚に多く含まれ,抗ヒスタミン剤など医薬品の合成などに多く利用されてきた三級アミンであり,最近米国Emory大学のCarl C. Pfeiffer教授1)により,中枢神経作用物質として報告され,すでに精神分裂病に対して治療経験も行なわれたものである。そしてこのものはノイロン間の伝達に使われるace-tylcholineの前駆物質と考えられている。この中枢作用は後述するように,動物実験において興奮作用を示しているけれども他の興奮剤とは大いに異なり,薬用量で不眠をきたすことはほとんどなく,かえつて睡眠の状態を改良する効果がある。われわれは最近エーザイ株式会社の提供により,このDMAE(製品名Naleptin)を使用する機会をえたので,これを正常人に用いて実験したところ,興味ある結果を認めたので報告する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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