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雑誌詳細

文献概要

研究と報告

γ-アミノ酪酸の精神薄弱児への使用経験

著者: 高木隆郎1 前田正典1

所属機関: 1京都大学医学部精神科

ページ範囲:P.811 - P.820

Ⅰ.緒言
 γ-アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid)CH2(NH2)・CH2・CH2・COOHは大脳灰白質,尾状核,小脳灰白質などに多量存在し,グルタミン酸(glutamic acid)COOH・CH(NH2)・CH2・CH2・COOHの脱炭酸によつて形成されることがJ.Awapara et al(1950),E. Roberts et al(1950)らによつて明らかにされた。その生理学的作用はなお十分明確ではないが,高橋らによれば,汎性視床投射系を含む網様体系に属するニューロンに興奮作用を与え,大脳皮質の覚醒,賦活をもたらすものと考えられている。また臨床薬理学的には山口ら,勝木ら,高橋ら,および村上らによつて血圧降下作用,脳波覚醒作用,抗昏睡作用などがあげられている他,精神薄弱児に投与することによりその精神機能の改善,知能の上昇が期待されている。とくに精薄に対する本剤の効果に関しても,さいきん清水,倉田,山村らの臨床試験の成績が公表されたが,それらはまず肯定的な結論である。しかしいずれもその作用は知能の上昇というよりも情動面の安定化という点でより強調される傾向にあり,とくに山村らはこの点のロールシャッハ・テストによる実証を試みているのは興味深い。また倉田は言語性知能指数における有意な上昇を認めながらも,なおその結論に関しては控え目であり,本剤が感情態のアンバランスに与えた効果が言語テスト成積に有効に影響する可能性を示唆している。われわれも約2年前よりγ-アミノ酪酸を精薄児対策として使用してみる機会をえたので,現在までにえられた臨床結果をここに報告する。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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