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雑誌目次

雑誌文献

精神医学1巻12号

1959年12月発行

雑誌目次

展望

老年精神医学

著者: 金子仁郎

ページ範囲:P.835 - P.846

 老年精神医学については,1954年第51回日本精神神経学会総会においてシムポジアムが開催され,その内容は「老人の精神障害」として刊行されているので,ここではそれ以後の進展を中心とし,それに私自身の考えを加えてのべる。
 近年老年学(Gerontology)や老年医学(Geriatrics)に対する各国の学者の関心が増し,雑誌も従来のJ.of Gerontology,Geriatrics,J. of Amer. Geriat. Society,Z. f. Altersforschung,Giornale di Gerontologiaらのほか,最近は実験的研究を主とするGerontologiaも刊行されるようになつた。わが国でも「老年病」という専門誌も刊行され,さらに老年学会も開催されるようになつたが,精神医学部門の研究はきわめて少ない。

研究と報告

After Careとしての就職退院の経験

著者: 横井晋

ページ範囲:P.849 - P.857

Ⅰ.まえがき
 わたくしたちの病院では,かなり以前から入院患者を就職退院させることについて,いろいろの努力が払われてきている。その成功例の中にはすでに数十万の財をなして社会の第一線に働いているような人もある。しかしそれらはとくに組織化された体制のもとに行なわれたものではなく,寛解ないし軽快患者の身寄りのない人を従業員が個人的に引取つたり,またはその縁故者に頼んで就職させたりしたものであつた。現在でも根本的にはその様式にとくに変つた点はない。
 最近治療や看護の目立つた進歩とともに,病者に対するわたくしたちの認識も改まつてきて,従来の閉鎖病棟の鍵をはずすことを出発点とする開放的な処置がしだいに行なわれるようになつている。そのうえ患者を社会と接触させることによつて精神状態の改善,すなわち従来の慢性化,施設化を防ぐことができることがわかつてきた。しかしなんといつても最終の目的は病者の退院による社会復帰でなくてはならない。竹村はその困難さを自らの体験によつてのべている。

精神病院入院患者の手指の汚染度について

著者: 峰村光平 ,   土井永記 ,   池田篤信 ,   高野輝子

ページ範囲:P.859 - P.863

 近年においてもわが国の赤痢流行は依然としてあとをたたない1)。一方精神病院内においても,古くから肺結核とならんで赤痢および下痢症の発生については知られており,われわれの勤務する厩橋病院でも御多聞に洩れず,第1表にしめしたようにこの2〜3年来赤痢の散発的および爆発的発生を見ている。その予防対策については,特に定期的に糞便の検査を行ない健康保菌者の早期発見と早期治療に力を入れているが,赤痢発生を絶滅するまでにいたつていない。
 そこで赤痢発生の要因を,病院内における患者の生活態度を中心に考えて見ることにした2)

精神薄弱児のMegimideおよびCardiazol賦活脳波とGSRについて

著者: 熊代永 ,   松田清 ,   庄盛敏廉 ,   西岡博輔 ,   石原務

ページ範囲:P.865 - P.872

 1)内因性と思われる精神薄弱児の賦活脳波お よびGSRを調べた。2)安静閉眼時脳波では44%にdysrhythmia,16%に発作性徐波をみ・過呼吸賦活脳波では,それぞれ68%・48%となつた。3)Mg賦活脳波では平均賦活閾値,1.57mg/kgで,またCd賦活脳波では5.36mg/kgで,不規則spike & wave complexあるいは3c/s前後の著明な高電位徐波を示したものが約60%あり,残り40%にはMgでは平均賦活閾値2.52mg/kgで,Cdでは7.8mg/kgで発作性高電位徐波が賦活された。しかも,著明な異常波は,Mgのほうが賦活効果がより明らかであつた。4)過呼吸のみで異常波の出なかつたものが11例,出たものが8例あつたが,著明な異常波賦活に要するCdおよびMgの所要量は両群ともいずれも大差はなかつた。5)GSR自発反応(-)者は52%,(柵)は48%で,前者は後老に比しごく少量で著明な異常波が誘発され,この効果はMgのほうが強力であつた。さらに,自発反応(-)者にはdysrhythmiaが少なく,光刺激反応の反応量は少なく,温順な児が多かった。6)Mg100mg以上使用の時は,とくに術後半日くらい頭痛・さむ気・食思不振等を訴える者がCdより多かつた。

家族性ナルコレプシーの1症例

著者: 山口哲衛 ,   梶原晃

ページ範囲:P.873 - P.878

 患者の父親と姉とにナルコレプシーがあり,兄姉3人にそれぞれ上肢のシビレ感,多量の発汗と流涎,入眠時の異常体感という植物神経性障害ないし神経症状がみられ,父方叔父の子および父の遠縁にてんかんがあるという負因の濃厚な1例を報告した。患者は15才の男子で性格は非社交的,勝気,短気,几帳面でさらに週期性不機嫌をも示すいわゆるてんかん性性格をもち,自律神経不安定症状があり,脳波上左後頭部にspikeを認め,カルジアゾール賦活後の過呼吸時には発作性高電圧徐波群が現われている。家族の脳波では,父親およびナルコレプシーを呈した姉には異常所見はないが,母親には発作性律動異常があり,兄姉2人には患者と同じく左後頭部にspikeがみられている。以上の家系について報告し,さらにナルコレプシーの身体的所見,性格的特色,脳波所見,てんかんとの関連,遺伝について検討を試みた。

動き

精神病院の将来—WHOクロニクル1958年6月12巻6号より

著者: 津田信夫

ページ範囲:P.881 - P.884

 昔の精神病院は,超過収容で刑務所のごとき建物であつた。そこに患者はほとんど治る望みもなく,非現実的な人工的な世界に強制的に拘束されたものである。今では多数の患者は病院の外で治療されるとともに,速やかな治療と社会復帰に重点が移つている。将来の精神病院は,特殊治療と調査研究のための小さい入院部門を持つ地域精神衛生活動組織の司令部であり,職員の訓練と研究のセンターとしてえがかれるであろう。WHOのブレチンに間もなく出版される小論の中で,英保健省の技官でWHOの顧問であるDr. G. Toothは,色々な条件のもとで近代的な精神衛生サービスを計画し樹立するときいかにこれらの概念が適用されるべきかを暗示している。
 彼の論旨と結論は大体次のごときである。

紹介

意識の構造,特に精神医学との関連において捉えられる定義,機能および構造—Henri Eyの所論の紹介

著者: 三浦岱栄

ページ範囲:P.885 - P.890

はじめに
 精神医学における意識障害の重要性については説くまでもない。しかし今までの演者たちの説明からも明らかになつたように,精神医学の各学派,たとえば,ドイツ精神医学,フランス精神医学,アングロ・サクソン系精神医学における意識障害の取扱い方および重要性は著しく異つている。これは純臨床的な記述的立場から見てさえもこの通りなのだが,更に脳波学の近年の発達は,意識障害とその脳定位の関係という従来病理解剖,実験生理の面から主に追求されて来た興味ある問題に幾多の光明を与えようとしている。亀井君の解説は主にこの点に向けられていたことは御承知のごとくである。
 さて,意識の定義,その機能および構造などは昔から哲学者たちによつていろいろと論ぜられて来たところであるが,近代心理学はその病的現象,換言すれば解体あるいは退行を通して,逆に正常構造や正常機能を組立てる方法によつて著しく進歩したごとく,意識現象もまたその例外であり得ず,精神病理学から類推して行くことができるのであり,私は本日主にこの方面を論じようと思う。
 さてこの純臨床的立場からの意識の問題についても,すでに無数の業績があるが,それを一々列挙するのは徒らに混乱を招くのみであると考え,また意識障害に関する前演者たちの説明がH. Eyの学説の紹介であつたので,私もまたその筋道を外れることなく,Eyの所論を紹介しよう。彼はEtudes Psychiatriquesの第3巻「急性精神病の構造」の最後の章において,これを総括的に論じているが,これは恐らく今日までの精神医学の書物の中で,もつとも徹底的に,またドイツ語圏の文献もくまなく分析引用されている刮目に値する論文なのだが,かなり難解であり,また多少迂遠冗長の嫌いなしとせず,よんでいるときは流石にEyだと感心することがしばしばであつたが,さてこれを簡単に要約して諸君に伝えようとする段になると,これはまたはなはだむつかしい仕事であることを知つたのである。しかしかねてからの約束にしたがつて一応以下簡単にまとめて見たが,はなはだ不完全なものであり,Eyの真意を伝えるにはほど遠いものになつたことは,私自身誰よりもよく気づいている。御諒察を願う次第である。

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精神医学統一用語集(J〜P)

ページ範囲:P.846 - P.846

—J—
Jugendgerichtsgesetz(D) 少年法
Judgendirresein(D) 青年精神病

精神医学 第1巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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