精神神経科領域におけるLevomepromazine(7044 R. P.)の治療効果について
著者:
野村章恒
,
阿部亨
,
近藤喬一
,
松永昇
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加藤正勝
,
河合博
,
高橋侃一郎
,
蒲池直裕
,
進藤利雄
,
太田浩
ページ範囲:P.255 - P.262
1.われわれはLP. を17例の分裂病患者に使用して,臨床的効果を観察した。その結果,精神運動興奮,不眠,拒絶症に効果があり,幻覚,妄想にも有効であり,不安,内的緊張感が去り,全般的な鎮静が見られた。接触性は大多数の例で改善が認められ,自発性も増加が見られるものもあつた。シヨツク療法無効の慢性患者においても,症状の部分的な改善が認められ看護が容易となつた。注目すべきことはCP. が無効の4例(症例1,症例7,症例11,12)に効果があつたことである。著明な改善を見た3例の中2例が廃薬して1週間から10日で,多少症状が再燃した処から見て,分裂病患者には1カ月を越えてもなお適宜減量して維持量を使用することが望ましい。
2.抑うつ病群5例に対する治療効果は,全例とも著明な改善を見,抑うつ状態全般の軽快が認められた。これはC. P. には見られなかつた長所であり,われわれの経験では抑うつ状態にはReserpineを凌ぐという印象を得た。症例2および症例5は本療法開始前に電痙2回乃至3回を受けているが,しかし本療法開始時に抑うつ状態はなお存在していた。初老期うつ病に対する電痙は,特に高血圧を合併する場合望ましくなく,時に不快な愁訴が永続して医師を悩ます場合が時々あるが,L. P. はこれに代るかまたは少くとも電撃回数を減らすことができる。しかしわが例ではLambertの云うような高年令者のショック様症状は経験しなかつた。
3.神経症の中,神経質の基盤の上に心因的発展を示す純型以外に種々な型の境界領域に属する神経症がある。これに対し従来C・P.,RP. が使用されたが,われわれの経験では効果に比し副作用強く,良効果が得られなかつた。L. P. は不安の強いものに有効であつたが,これについては更に症例を追加して検討したい。
4.L・P. の副作用は大体C. P・に類似し,鼻閉口渇,倦怠感,傾眠作用があるが,起立性低血圧(立くらみ)の発作を起すものは割に少く,パーキンソン氏病様状態もC. P. よりやや軽度でPerphenazine(Trilafon)のごとく頸筋,背筋腰筋の強直,疼痛を来たしたものは1例に過ぎない。