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文献詳細

雑誌文献

精神医学1巻6号

1959年06月発行

研究と報告

インシュリンショック治療経過のグラフによる表現—インシュリンショックグラム(ISG)の提唱

著者: 町村俊郎1 清野昌一1 小島真1 松岡栄一1 逸見光昭1 堀口良男1

所属機関: 1国立東京第一病院

ページ範囲:P.397 - P.401

文献概要

Ⅰ.まえがき
 インシュリンショック治療では,中途で低血糖進行過程の速さと深さを任意に管理調節できぬ欠点があり,投与単位と覚醒時期をきめることが,実施の重要なポイントとなつている。従来はインシュリン表またはショック表に,各種低血糖症状の発現,消失時間を順次記載して3),低血糖進行過程を察知し,それらをきめる参考としてきたが,このような表ではいくつかの症状の発現,消失の早い遅いがわかるぐらいで,日を重ねるにつれての傾向や各症状間の関係を総合的に知り難いうらみがある。
 そこで,体温や脈搏や呼吸を毎日数字で書きならべる代りに,温度表にしめし,連日の推移を知り,類型が定められ,分析できるようになつたことを思いあわせ,著者の1人町村は,インシュリン低血糖症状群の発現態度とその推移をグラフにあらわすインシュリンショックグラム,ISGを考案した。従来は,ただBraunmuhlがインシュリン投与量のみをグラフにえがきSchock-Linieとしたほかには,このようなこころみがなかつたようである。もちろん臨床症状がどこまでインシュリンショックの実態をしめし,それが毎日の投与単位や覚醒時期をきめるのに役立つかについては,系統的な研究がなされていない2)。それゆえ,このISGにより低血糖症状群の発現態度や推移をより確実に把握できても,従来の経験にもとづくこの治療の術式から一歩をすすめるにすぎぬかも知れない。しかしISGをこれまでもちいてみると,これを研究の示標として,血液化学的および脳波的検索などと関連させて,この治療にともなう臨床生理学的究明に新しい分野がひらかれ得るという見当もついてきた。今回はまずISGの作り方,それをもちいた症例の説明およびこれから抽出される知見をのべ,さきに経験された4遷延昏睡症例を,このISGにえがいて検討を加えた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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