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雑誌詳細

文献概要

研究と報告

Iminodibenzyl誘導体による抑うつ状態の治療経験

著者: 村上仁1 藤田貞雄2 布施邦之3 平沢一1 瓜生萬里1 篠原大典1 藤田聞吉1 稲本雄二郎1 国吉政一4 船坂和彦2

所属機関: 1京都大学精神科 2日永病院 3西山病院 4岩倉病院

ページ範囲:P.411 - P.416

 Tofranilを約100名の抑うつ症状を有する精神疾患者に投与し,82例について薬効を追跡し得たので報告した。
 1. 全症例のうち効果が認められたものは5割から6割である。抑うつを主症状としうつ病と診断された症例では約7割に効果を示した。内因性並びに反応性5つ病では割合緩徐であるが確実に作用し,退行期うつ病には劇的に奏効するものもあるが無効例もあつた。
 2. 具体的に6例の症例を記載し,a)病期が終らぬうちに投与を中止すると再び悪化することがあり,症状が好転しても一定期間持続して投薬する必要があること,b)電撃療法,バルビッレイト,クロールプロマジンなどを併用して好結果を得た場合もあること,c)治癒過程において症状群の分離をきたし,あるいは精神療法に対する患者の態度が変化してくることを観察した。
 3. 効果を明確に把握するためPlaceboをやむを得ず8例に使用したが,うち6例は明らかに症状の悪化をきたした。なお自殺の目的で1回に15錠服用した例,健康者の試験的服用についても述べた。
 4. 副作用は特に危険なものはなく,自律神経系の症状が多く,肝,腎が特に障害されたものはなかつた。しかし意識の変容あるいは混濁をぎたしたものが3例,ジンコープに陥つたもの1例があつた。 

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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