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文献詳細

雑誌文献

精神医学1巻8号

1959年08月発行

文献概要

研究と報告

共生的精神病(M. Mahler)と思われる1例

著者: 高木隆郎1 川端利彦1

所属機関: 1京都大学精神科

ページ範囲:P.569 - P.573

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 人間は動物に比して幼児期が長い。それは,動物がよく発達した本能をもつて生れてくるのに対して,人間の生れながらの本能はそれだけで生存を支えるのに十分でなく,人間が自から現実に適応できるためには,ある程度の自我の成熟をまたなければならないからである。したがつて自我が未発達な幼児期には,母あるいはそれに代る成人の,注意深い愛撫ないし庇護が必要とされる。生後すぐの乳児においては,このことは最もいちじるしい形で現われるのであつて,彼の母に対する関係は寄生虫の宿主に対する関係に例えられる。この時期に母の十分な助力が得られないと子供はほとんど破局的な状況に陥いる。
 このような母への寄生的な状況の中で,繰返し行われる母との身体的な接触は,子供に自己の身体感覚を学ぶ機会を与え,それによつて子供は徐々に母あるいはそれ以外の対象と自己との区別を知るようになる。子供のかかる感覚の分化は自我発達の一つの段階を意味するのであるが,これらは言葉がいえ,歩行が可能になるなどの身体的な成熟と相まつて母との分離をうながし,子供は次第に母への寄生的な関係を離れて独立の活動へと向うようになる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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