icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学10巻1号

1968年01月発行

研究と報告

精神分裂病の責任能力への一寄与

著者: 中田修1

所属機関: 1東京医科歯科大学犯罪心理学研究室

ページ範囲:P.43 - P.47

文献概要

 われわれの経験によると,精神分裂病者の犯罪が裁判者によつて有責と認められることが少なくない。しかし,司法精神医学的見解としては,精神分裂病の行為は原則として責任無能力であるというのが,支配的なようである。ただし,ごく軽症の分裂病,潜在分裂病や,ことにいちじるしい寛解期の分裂病に対して責任を認むべきであるという見解もある。われわれは裁判の実情の一端をうかがうために,わが国の判例を調査したところ,精神分裂病の事例で心神喪失の判決を受けた例が15例,心神耗弱の判決を受けた例が5例見出された。これらの判例をみると,精神分裂病といえども症状のいちじるしく高度な場合,犯行が妄想・幻覚などの病的体験に直接支配されている場合などのほかは,責任を認むべきであるとする考えかたが,裁判官のなかに支配的であるように思われる。それゆえ,裁判官の一般的な考えかたは,精神分裂病の行為は原則として責任無能力であるとするわれわれの司法精神医学的見解からかなり遠いようである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら