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文献詳細

雑誌文献

精神医学10巻2号

1968年02月発行

文献概要

研究と報告

精神分裂病患者の再入院防止に果たす長期薬物療法の役割—とくに症例研究的側面から

著者: 大熊文男1

所属機関: 1国立国府台病院精神科

ページ範囲:P.113 - P.118

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Ⅰ.序言
 ここ10年間に薬物療法がいちじるしく進歩して,精神分裂病の入院患者は以前と比べ容易に社会へ戻ることができるようになつた。その結果,精神科の病床回転率は好転したが,再入院率がいぜんとして高いため病床はあいかわらず不足したままである。蜂谷7)によると退院した患者の半数以上が2年以内に再入院してくるというが,これはいつたいどこに問題があり,どのようにすればこの再入院を防止できるのか,そしてまた,こういう事態に対して薬物療法はまつたく無力なのだろうか。精神科医の多くがこのような疑問を持つているにちがいないが,新しい薬物の治験報告は枚挙にいとまがないにもかかわらずこのような疑問に答えてくれる報告は散見するにすぎない。
 たまたま,私は同愛記念病院在職中受持つた入院患者で,同院を退院してからもなお引きつづきほぼ定期的に私のもとへ通つて服薬をつづけ,その結果5年から7年余にわたり継続的に経過を観察することができた10症例を得ているが,この長期薬物療法の経験から再入院防止に関していささか知見を得たのでここに報告する。なお,私がここに「薬物療法」というのは外来診療の時間的制約のため薬物がその治療のもつとも大きな要素をなしているという意味であり,特殊な技法によるもの以外の精神療法的接近が同時に行なわれていることは論をまたない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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