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文献詳細

雑誌文献

精神医学10巻5号

1968年05月発行

文献概要

特集 うつ病—日本精神病理・精神療法学会(第4回大会シンポジウム) Ⅱ部 Schuldgefühl(罪責感)

うつ病における罪責感の症候学的知見

著者: 近藤喬一1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学精神神経科教室

ページ範囲:P.366 - P.370

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I.はじめに
 内因性うつ病の臨床像に現われる特徴的な妄想内容の主題領域に,貧困・心気・罪責の三つが挙げられることなよく知られている。そのなかで罪責感はうつ病者に固有な現象であるのではなく,もちろん人間一般に共通する普通心理学的範囲に止つており,またうつ病ばかりでなく,神経症や諸他の精神障害の状態に生ずる現象でもある。
 うつ病における罪責感がいわゆる三大病的体験の一つとして知られているにもかかわらず,それが実際の臨床症状のなかで果たす役割はそう大きなものではないという印象がわれわれにはある。しかしその一方で,うつ病の罪責体験がその精神病理学的症状の全体構造においてまさしく中心的な位置を占める1)のは,v. Baeyerの言を借りて言い直せば,罪責の問題をいわば指標としてとちえることによつて,うつ病者の損われた精神力動の本質に迫ることが可能になると考えられるからであろう。ここでこの問題に立ち入つて論ずるつもりはないが,上に述べたようなうつ病の罪責感の病因論的意義への問いを心に留めつつ,実際の臨床においてうつ病の病像のなかに罪責感という病的体験がどのようにして現われるかを,資料に基づいて総論的・臨床記述的立場から少しく考察してみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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