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文献詳細

雑誌文献

精神医学10巻6号

1968年06月発行

文献概要

研究と報告

体感異常の研究

著者: 麻生和友1 秋本辰雄1

所属機関: 1久留米大学医学部精神神経科教室

ページ範囲:P.443 - P.447

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Ⅰ.緒言
 精神分裂病患者の訴えるさまざまな表現のなかに,よく“内臓が腐る”,“脳みそが溶けてしまう”,“子宮をいたずらされる”など,身体感覚(cenesthetic sense)についての奇妙な内容がある。われわれはこのように特異な体感の訴えが身体像(body image)の障害と関連していると思う。Fenichel1)によれば精神分裂病における身体像の障害は,いろいろな心気的訴え,奇妙な身体機能の報告,自己の身体の離人感として分裂病の諸症状のなかに,きわめて普遍的に存在するものである。このような身体像の障害に伴つて,当然思考や情動にも変化が現われると考えられ,この点Schilder2)はとくに知覚(perception)を重視して,有機体を知覚,思考,情動をもつて統合される理論的本態として身体的および精神的側面から考察している。かれは,もし知覚がなければ,印象(impression)も表現(expression)も存在しないし,知覚のない思考や情動もありえない,同時に知覚のない行為や洞察も存在しないと述べている。この考えかたは.身体像の変化が思考や情動にもなんらかの影響を与えることを示していると思われる。
 われわれはこのような観点にたつて精神分裂病の諸症状のなかでとくに体感の訴えを,身体像の変容の結果としてとらえ,これに伴う分裂病性の諸観念を調査しようと考えた。そして本研究の目的を,精神分裂病と同時にそれとは少し異なつた身体像の障害をもつと思われるcenestopathieに対して,身体像の立場からとくに身体境界(body boundary)を検討することにおいた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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