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文献詳細

雑誌文献

精神医学10巻6号

1968年06月発行

文献概要

研究と報告

精神分裂病の家族療法(その1)—患者の対象物関係の変化と治療過程について

著者: 阪本良男12 横山桂子2

所属機関: 1大阪市立大学医学部神経精神科 2阪本病院

ページ範囲:P.471 - P.477

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Ⅰ.緒言
 精神分裂病の病理およびその発病機制については多くの研究者により患者自身だけでなく,患者も含めた家族の面からも研究がなされるようになつてすでに久しい。とりわけ米国において1940年代には,研究の対象は精神分裂病を有する両親の人格特徴と社会的態度に向けられて,その成果は「schizophrenogenic mother」という標語に結集された。しかし周知のごとく過去10年間においては研究の方向は家族全体の問題となり,全家族を一つの単位として,家族の個々の人々の間の相互関係および感情交流のパターンにとくに研究の方向が向けられたのである。このような研究の発展と相まつて実際治療としての家族療法もまた,新たな研究の課題となりっつある。このなかで代表的なものはBateson1),Lidz2),Wynne3),Searles4),らの研究である。
 筆者は最近,こころみに発病より8年間たつた妄想型精神分裂病患者に7カ月間,計21回の家族精神療法を行ない,一応妄想の消失と社会適応性をみたので,患者がしだいに獲得していつた正常な方向への対象物関係の変化と現実吟味の力の改善を家族療法の推移と並行して考察してみたいと思う。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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