文献詳細
研究と報告
老年期脳波の比較的研究
著者: 森温理1 黒川英蔵1 小泉道義1 石川安息12
所属機関: 1東邦大学医学部神経精神医学教室 2現:国立国府台病院神経科
ページ範囲:P.489 - P.495
文献概要
(1)対象は正常成人50例,対照老人50例,高血圧60例,脳動脈硬化60例,脳卒中60例,老人痴呆40例の計320例である。平均年齢は,正常成人をのぞくと56.9〜67.9歳である。
(2)異常脳波は正常成人4%,対照老人14%,高血圧35%,脳動脈硬化50%,脳卒中63.3%,老人痴呆80%にみられた。
(3)α波の周波数では正常成人には9〜11c/sのordineryαが圧倒的に多いが,高血圧以下の疾患群ではslowαが多くなり,波の振幅では,正常成人および対照老人には30〜50μVの中等度振幅のものが多いのに対し,他の群では,低ないし高振幅αを示すものが多い。つぎに徐波についてみると,正常成人ではわずかであるが,対照老人,高血圧では多少多く,脳動脈硬化,脳卒中では徐波の出現は著明となり,老人痴呆ではびまん性持続性徐波が飛躍的に多くなる。
(4)おもな脳波パタンを総括すると,対照老人ではα波律動の不規則化,α波の汎発傾向,速波が,高血圧では高振幅,平坦化,速波,diffuseαなどが,脳動脈硬化ではdiffuseα,高振幅,平坦化,速波,徐波などが,脳卒中ではdiffuseα,徐波,非対称などが,老人痴呆では徐波,diffuseαなどが特徴的であつた。
(5)自動周波数分析器による分析結果は肉眼的観察とほぼ一致するように思われた。
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