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文献詳細

雑誌文献

精神医学10巻8号

1968年08月発行

研究と報告

家族を被害者とする被害妄想について—分裂病者における共同体感情の障害についての考察(Ⅱ)

著者: 小久保享郎1

所属機関: 1東京医科歯科大学神経精神医学教室

ページ範囲:P.613 - P.617

文献概要

Ⅰ.序言
 精神分裂病を,病者の世界内存在における存在様式の変容という観点から考察するこころみは,今世紀の初頭からしだいに活発になつてきて最近にいたつては一種の流行ともいえる隆盛を示しているが,これが単なる一時的の流行にとどまるものでなく,従来の要素的心理学にもとづいた個々の症状の集積をになうものとしての病者の把握の不完全さから抜け出して,病者を統一的全体としてその本質的な存在構造に光をあてるこころみとして分裂病研究に新たな局面をきり開きつつあることはW. v. Baeyerの言をまつまでもなく正当な評価といえるのでなかろうか。このいわゆる人間学的な接近において問題の中心を占めるのは病者の共人間的なかかわりかたという側面であろう。
 われわれはさきに,嫉妬というきわめて人間くさい主題を中心として,その病的現われである嫉妬妄想をとおして共同体内での病者の存在様式の変容を論じた1)。すなわち,嫉妬妄想への過程は病者の「われ・なんじ」という両者的存在へのこころみの挫折であり,これを包括的に共同体感情としてみたときそれは負の方向への,いわば解体ともいうべき過程をたどることを示した。ところで,分裂病者において共人間的存在の核としての両者的存在はつねになんらかの変容を示すとしてもそれはかならずしも負の方向へと共同体感情の解休の過程をたどるとはかぎらない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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