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文献詳細

雑誌文献

精神医学10巻9号

1968年09月発行

研究と報告

一卵性の双子の一方に現われた強迫神経症の1例

著者: 辻悟1 小林良成1 西岡志郎1

所属機関: 1大阪大学医学部精神神経科教室

ページ範囲:P.699 - P.704

文献概要

Ⅰ.序論
 強迫神経症の病因に関しては従来より種々の立場から論じられているが,強迫神経症が特定の人格を基盤として発生することはBinder,Schneiderらにより指摘されてきた。そしてかかる特定の人格の成因を遺伝的dispositionに求めようとする立場と幼時の対人関係などの生活史背景を重要視し発達障害的に理解しようとする立場とがある。両者の関係を明らかにする1つの重要な研究法として双生児研究があることは従来から知られている。すでにLange,Le Gras,Kranz,Robertはそれぞれ1組の一卵性の双生児の強迫神経症の一致例を報告しており,わが国では井上,飯田,田島が一致例を報告している。文献的にみれば,一卵性双生児に一致度が高く,二卵性では一致例の報告を見ない。この事実は強迫神経症の病因が主として遺伝による可能性を示唆しているといえるが,これよりただちに遺伝を云々することは困難である。なぜなら与えられた環境状況下における自己形成過程の複雑な問題も考慮されなければならない。われわれは一卵性双生児の一方のみ強迫症状を呈した症例を経験した。一致例の分析もさることながら,かかる不一致例の分析が強迫神経症の病因解明に役立つと考えられるので報告する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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