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文献詳細

雑誌文献

精神医学10巻9号

1968年09月発行

文献概要

研究と報告

新しい抗てんかん薬Benzylaniline-4,4′-disulfonamide(Benzanilamide)

著者: 金子仁郎1 谷向弘1 西村健1 乾正1 播口之朗1 山田悦秀2 山本順治2 藤木明2

所属機関: 1大阪大学医学部精神神経科学教室 2浅香山病院精神科

ページ範囲:P.751 - P.758

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 教室の過去数年にわたる炭酸脱水酵素(CAH)阻害剤の研究中にみいだされたBenzanilamideは,脳CAHを強力に阻害し,基礎実験で精神運動発作と大発作を抑制する作用のあるらしいことが示された。急性毒性はきわめて低く,慢性毒性試験では薬用量の100倍以上を3〜4カ月投与した群に,感染に対する抵抗性の低下と,ネフローゼを思わせる所見を得たが,薬用量の20〜50倍量3〜4カ月連用群では各臓器に認むべき変化はなく,催奇型作用も認められなかつた。
 既存の種々の抗てんかん剤で3カ月以上治療されてもなお発作の頻発している「難治性」てんかん患者50名に,それまで投与されていた薬剤に付加して,木剤250mg/日ないし1,000mg/日(多数例では500〜750mg/日)を投与し,投与前の平均発作間隔の10倍以上の期間観察した結果,80%以上が著効,95%以上が有効と判定された。あらゆる発作型に有効であつたが,もつとも効果の期待できるのは精神運動発作であり,従来治療困難とされていた焦点性発作,ミオクローヌス発作,失立発作にも相当な効果をおさめた。副作用として重篤なものはなく,その発現頻度も低いが,臨床検査で腎機能低下を認めた症例があるので,腎障害あるいはその既往のある患者に対する使用は慎重でなければならない。血液像,血清電解質値,肝機能,尿所見などには,長期投与後もなんら異常はみられなかった。
 以上より,本剤は広い臨床適応スペクトルを有する抗てんかん剤として,他剤で治療しても十分な効果の得られない「難治性」てんかんに付加剤として効果の期待できる有用な薬剤であると思われる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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