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文献詳細

雑誌文献

精神医学11巻1号

1969年01月発行

文献概要

研究と報告

Tellenbach教授の宗教精神病理学への人間学的寄与—《妄想とメランコリーにおける宗教的基底作用の崩壊》の講演と討論

著者: 竹内直治1 竹内光子1

所属機関: 1長野県立駒ケ根病院

ページ範囲:P.45 - P.50

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 内因性精神病について,われわれが目をみはることの一つは,罪業妄想・宇宙妄想・使命妄想・恩寵妄想・救世主との同一化妄想などにおいて,日常的な世界の変化のみならず,すでに聖なる領域にまで及ぶ病者の世界全体が変化しているという事実である。K. Schneiderは《宗教精神病理学入門》(Zur Einführung in die Religionspsychopathologie,1928)のなかでこうした症例をたくさんあげている。Weitbrechtは伝統的な精神医学の立場を守りながら,症例を生活史的に深く掘りさげ,世界と人格と精神病との関連を考察した(Beitrage zur Religionspsychologie,1948)。またA. Storchは宇宙や聖なる世界に及ぶ分裂病者の精神生活について,発達心理学や民族心理学の立場から解釈した(Das archaisch-perimitive Erleben und Denken der Schizophrenen,1922)。さらにv. Baeyerは罪という限定されたテーマであるが,内因性精神病における罪の問題(Ein Fall von schizophrenem Schuldwahn. In:Psychopathologie heute,1962)を論じた。しかしこれらの論文をのぞけば,内因性精神病の宗教問題ととりくんだ論文はきわめて少ない。これは,神経症に関する精神療法学的研究が,神学との境界領域を顧慮してきたのとまつたく対照的である。S. FreudやC. G. Jungの宗教心理学的著作は,心理学が神学領域にはいりこむ契機となったが,Gebsattelの人間学的基礎に立つ精神療法学も,神経症について,超越世界との関連が決定的な重要性を占めることを論じたものであり,これに匹敵するような,つまり内因性精神病の発展の一根源として宗教問題を論じた確固たる視点はまだ発見されていないようである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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