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文献詳細

雑誌文献

精神医学11巻1号

1969年01月発行

文献概要

研究と報告

盲目患者における幻視の1例—平衡機能障害との関連において

著者: 杉本直人1 鈴木鉦一郎1 宮川健二1

所属機関: 1岐阜大学医学部神経精神科

ページ範囲:P.53 - P.57

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Ⅰ.緒論
 盲目状態において,幻視ないしは幻視様の体験のあることはAnton氏徴候を有する患者にしばしば出現する現象としてすでにかなりの報告がある。これらの症例では自己の盲目状態の否認ということと関連して,体験されている幻視像は視想起像であると結論されていることが多いようである。一般に幻視の出現機制については,脳視覚領の刺激症状であるとする説や,全体的な脳の機能状態を考えねばならぬとする説,願望などの心理的契機が考えられねばならぬとする説,さらには平衡機能との関連においても考えられるとする説など各学者の専門領域あるいは立場によつて種々の説明がなされている。
 視力を失い客観的な事物はなにもみえないなどの盲目状態において体験される視覚像(幻視)は,盲目であるという条件を考えるとき,視現象,視機能に関する生理学的,解剖学的,心理学的,精神病理学的な問題に関する好個の材料であるということができる。われわれは今回下垂体腫瘍のためほとんど全盲(右眼:視力なし。左眼:明暗の弁別程度)となつた患者に,幻視が突然出現し,そのため妄想状態となつた例を経験したので,その症状を報告し,同時に身体的所見ことに平衡機能との関連においてその症状を考察してみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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