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雑誌詳細

文献概要

研究と報告

精神分裂病への集団精神療法のこころみ(そのⅢ)

著者: 阪本良男1

所属機関: 1大阪市立大学医学部神経精神科

ページ範囲:P.65 - P.69

I.はじめに
 精神力動的な精神分裂病の症状,理論,およびその治療に関しては,こんにちまで多くの研究がなされ,その研究者のとる立場により,いろいろの説がたてられている。しかし,これらの研究の多くは,その対象として,医者と患者との間の1対1の関係における会話,および患者の関係者からの会話を,治療者であり研究者である医師などが,さまざまな角度から解釈し,検討し,その理解を得ようとしたものである。そこには,いわば一種の特殊な環境においてつくり出された人工の場からの産物であるといえるものも含まれていると考えられる。すなわち,社会的人間としての患者の一面の姿しかとらえていない場合があるのである。しかし,妄想を有する患者は,その妄想を現実の世界のなかでひとりでつくりあげたというよりは,家族を含む社会のなかで,すなわち多くのさまざまな人間関係のなかでつくりあげたと考えられる。筆者は,上記の人工の場で語られたものよりも,現に症状を有し,またかつて有した患者の発言を,集団精神療法中からとらえることが,より患者の住む世界に近い時点で,現在,患者が感じ,また表現する,個々の体験をとらえることになると考えた。そこで,われわれは過去2年間行なつた精神分裂病に対する集団精神療法の経験から,二,三の話題をとりあげ,精神力動的にその意義について論じたい。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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