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文献詳細

雑誌文献

精神医学11巻10号

1969年10月発行

研究と報告

神経質者の家族関係

著者: 岩井寛1 大原健士郎1 小島洋1

所属機関: 1慈恵医科大学精神神経科教室

ページ範囲:P.781 - P.785

文献概要

I.はじめに
 従来,森田療法では患者が訴える症状および過去における精神外傷を不問に付し,現実場面で患者が直面する状況での生きかたを重視する態度をとつてきた。また,森田1)は「神経質は,広義にいわば一種の神経ないし精神性変質症なり」というように,素質傾向に重点をおいている傾きがある。森田の神経質理論についてはヒポコンドリー性基調を素質的にもつた神経質者が精神交互作用の機制において「とらわれ」の状態にいたることによつて症状が発現するという考えかたが根底になつているが,これに対して土居2)は「とらわれた注意は神経質症状の成立を説明する鍵となるよりも,むしろそれ自体神経質症状の中核を形づくるものであり,その成立機転はべつに説明を求めねばならない」といい,新福3)は「とらわれや注意はなにも主体の自由なはたらきの結果ではなく,無意識的に規定された態度や環境条件などによるものであるから,それは客観的事実として客観的条件の布置からとらえられなければならない」としている。この点,たしかに従来の森田療法理論では成立機転の研究が不足していた傾きがあり,その機制の一端を知るために患者の成長史での状況とのかかわりあいを知ることはおおいに意のあるところであると信ずる。さらに患者と状況とのかかわりあいのうち,もつとも患者に影響を与えずにはおかないのが家族とのかかわりであり,以上の立場から私はこの研究にとりくむことにする。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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