特集 心気症をめぐつて
第5回日本精神病理・精神療法学会大会シンポジウムより
まえがき
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著者:
村上仁
所属機関:
ページ範囲:P.332 - P.332
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まず最初にこのシンポジウムの司会者として一言お断りしておかなければならない。私はこのシンポジウムの主題として,狭義の神経症の一類型としての心気症だけでなく,種々の精神病的心気状態,離人症,自己臭症状群,分裂病の身体感覚異常などをも問題とし,これらの問題をテーマとした応募演題によつてシンポジウムを構成したいと予告した。しかしこれは後になつて考えて見ると,あまりにも広汎な領域を包含するものであり一つのシンポジウムとしては明らかに無理があつた。果たして,本年度は一般の演題も数が多かつたが,ことにこのシンポジウムに関連する演題が数多く寄せられ,時間の都合上残念ながらその演題の多くを割愛せざるをえなかつたし,その一部は本日の午前中の一般演題の部にも食い込むことになつた。これはもつぱら不用意な予告をした司会者の私の責任であり,応募していただいた皆様に深くお詑び申上げたい。
さて本シンポジウムは二部に分たて,第一部は保崎氏の心気症の概念についての序説に始まり,西園氏,佐々木氏,中久喜氏らによつて神経症の一型としての心気症の類型的分類発病機制,および精神療法的手法などが論ぜられ,活発な討論と相まつて,一応まとまつたものになつたと思われる。ただ小谷野氏の体臭恐怖および視線恐怖に関するテーマは,本来の心気症とはやや趣きを異にし,十分の討論もなされなかつたので来年度以降にさらに詳しい検討がなされるはずである。