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文献詳細

雑誌文献

精神医学11巻6号

1969年06月発行

文献概要

資料

東京都における精神医療と診療圏について—地域精神医学的考察

著者: 菅又淳1 榎本稔1 小林春江2 丸山はつみ3 三輸和恵4

所属機関: 1東京都立精神衛生センター 2東京都向島保健所 3東京都町田保健所 4東京都練馬保健所

ページ範囲:P.489 - P.495

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I.はじめに
 精神医療が入院治療中心から外来通院治療へ,さらに地域の精神衛生へと,その思潮が拡大されるに従い,堆域社会と病院との関連が大きな問題になつてくる。人口移動が少なく比較的閉鎖された農山村地帯と,交通機慶が発達し,人口移動のいちじるしい広範囲の大都市圏とでは,入院および外来の患者の動態はいちじるしく異なり,その診療圏はまつたく別の様相を呈している。岩佐1)は「診療圏とは受診活動が他の範囲と場所的に区画されて,同質的な共通性を持つて行なわれている範囲である」と定義し,「診療圏は医療施設とそれを利用する患者との空間的な場所関係を規定する概念であるから,それは対象となつている医療施設の特性のみによつて規制されるものではなく,その地域の地理的条件や人口分布,文化,経済,交通事情等々,自然的,人文的諸要因によつて強く影響されるだけでなく,周囲にある他の医療施設との関連によつて形成されるものである」と述べている。さらに岩佐は昭和30年の厚生省の診療圏調査をもとに,診療圏の特徴は病院の種別によつて異なり,診療圏の大きさはその拡がりと深度との関連において把握する必要があり,その指標として,患者の半数が含まれる範囲である中央値と,90%値が考えられると述べている。第1表は精神病院と一般病院との比較であるが,中央値,90%値とも精神病院の方が大きく,2倍以上にもなっている。すなわち診療圏は大きく拡がつている。第1図は山口県の病院別の入院患者時間距離別分布であるが,精神病院の場合,深度も浅く,拡がりは富士の裾野のようになだらかに延びている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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